神さんになびかないマネージャー
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「あれ、清田?」
「へ?あ!も、ももも桃子さん!おつかれさまっす!」
「部活帰り?今日研究室よる?あ!あ、彼女?ごめんなさいえっと、」
「あ、彼女じゃないです。幼馴染みの原田です。いつもノブがお世話になっております」
「いやお前に世話はされてねえわ」
「わ、初めまして!わたし、清田と同じスポ科の草野桃子です!2年!」
「ちょうどよかったノブ、わたし神さんと約束してるから!じゃあ桃子さん、また」
「へ?おい、どした?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
時計は夜の7時をまわり、家族に遅れて食べた食事の後片付けをしているところだった。
「宗ちゃん電話」
「え?おれ?」
「バスケ部の原田さんだって、女の子」
「っ、まどかちゃん!?」
「あれ、彼女?」
「そうだよ!」
渡された子機を受け取って保留のボタンをおしたけど、なんだか様子がおかしい。
「まどかちゃん?」
「じんさん、どうしよ、わたし、」
「え、なに?なんかあった?」
「えっと、なんだろ、」
「いま家?」
「そうです」
「すぐ行くから、まってて」
にやにやした母さんを放って、慌てて自転車に飛び乗る。急いで7分、通いなれた道だ。後先考えずピンポンを押すと、初対面のお父さんが顔を出す。
「えっ」
「あっ!あの!遅くにすみません、海南大の神ですが」
「うわあ、噂の男前だ…母さん浮かれてるんだよ、いやそれは置いといて」
「え?」
「なんかあいつ変なんだけど、もしかして連絡した?」
「そうなんです、家に電話くれるなんて初めてでびっくりして来ちゃいました。すみませんもうじき8時なのに」
「ゆっくり話したいのは山々なんだけど、こんど是非ね。どうしたんだろうな、なんかあったら大抵ノブんとこ行ってすっきりしてくんだけど」
「ああ…」
「神さん!」
「まどかちゃん!どうしたの」
「自転車乗せて!」
「へ?いいけど…上着着ておいで」
はっとして奥から長袖のパーカーをひっかけて出てきたまどかちゃんは玄関を飛び出す。悪いねえと言うお父さんに頭を下げて自転車にまたがった。まあまあのスピードで近所を走りながら、次のことばを考える。
「公園か…学校でもいいよ、それか海でも 」
「んん、公園」
「りょーかい」
いつもの公園も夜は真っ暗だ。街灯に近づきすぎると虫がいるので暗いベンチで、通りの灯りを眺めながら。
「ノブに好きな人がいるんです」
「へえ」
「すぐわかりました、肩叩かれて真っ赤になって、湘北のお姉さまみたいなきれいな人で」
「で?妬いた?」
「や、うまくいってほしいんですけど、何をしたらいけないのかわかんなくて」
「あ~」
「今日思わず逃げてきちゃったし、でも部活はともかくあいつが生活に馴染みすぎてて、なんか手足もがれそうな気分です」
「そっかあ。手足はきついな」
「でしょ」
「本人に聞いてみたら」
「えー!?聞くの!?」
「俺も一緒に話し聞こうか?今からでもいく?」
「ううん」
「信長が、まどかちゃんのこと煙たがらないといけないような人を好きになるとは思わないけど?」
「そんなのわかんないじゃないですか」
とうとうビービー泣き出したまどかちゃんのてを握って、だいじょうぶ、と繰り返した。 俺は二人の関係はかけがえないものだからと見守って可愛がってきたけど、一般的にみて幼いとは感じていた。今その出口だか曲がり角だかで、ひどく苦しんでるのは見ての通り。
「おれは、電話くれて嬉しかった」
「だって神さんしか思い付かなくて」
「うん。いいんだよ、おれ一応彼氏なんだから」
「わたしもしかして、ひどいことしてますか」
「俺じゃなければそう思う人もいるかもね」
「神さんはちがうの」
「うん。今辛そうにしてるの、がんばれって。まどかちゃんが必死なの見ると、いじらしくてたまらなく思うよ」
「神さんやっぱ、お兄ちゃんじゃん」
「うん、でも、彼氏」
「うん」
「俺は信長と話した方がいいと思うけど」
「うー、」
「距離の取り方がわかんないなら、他の人と一緒にいたらいいんじゃない?野原先輩もいるし、牧さんだって武藤さんだって、高砂さんもああみえてまどかちゃんのことかわいいんだよ」
「はぁい」
「でもまあ練習中はともかく、それ以外は俺んとこにいてほしいかな。明日の朝迎えに来てもいい?」
目を潤ませたまま大きく何度も頷いたまどかちゃんを抱き寄せる。じっとしているとぬくもりが伝わってきて、俺は大きく息をした。
「すみません、遅くに」
「なんで。俺は嬉しかったよ。俺に話してもいいって思ってくれたんでしょ」
「ん」
「落ち着いた?」
「ん、でも、もうちょっとこうしててほしい」
「!!」
めんたまからお星様、こぼれたかも。胸がいっぱいでうまく息が吸えない。くったりして胸に耳を寄せるまどかちゃんが、もっともっと近くなるようにちからを込めた。俺のエゴで、わがままだと思っていた。
「帰ろ、あんまり遅くなったら心配かけるよ」
「うん」
「はい、乗って」
「じんさん」
「ん?」
「どうしよう、わたし神さんのことすっごく好きかも」
「っ!!……ふ、遅くない?」
「たしかに…」
ふにゃ、と笑った顔をみたら、心配はとんでいった。言ってみれば親よりずっと一緒にいる信長との距離の取り方なんてそりゃあすぐにはわかるまいけども。じたばたしていいんだよ、と言わない分スピードをあげる。