神さんになびかないマネージャー
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「おっ!来たか!」
にかっと白い歯を見せて声かけてくれた牧さんに駆け寄って、ノブと一緒に頭を下げる。
「しかしちょっと意外だ、お前がマネージャー続けてくれるとは」
「え?あ?あ?ああ……!!」
「どうした?」
「よく考えたらわたし、別にいなくてもよくないです…?」
しまった、惰性でノブにくっついてきてしまった。なにが楽しくて大学でまでマネージャーするかよ。よくわかってない顔の牧さんと、呆れた神さんが並ぶ。
「そんなこと言わずに入れよ、お前がいると面白いじゃん」
「えっ?武藤さんひどくないです?むしろわたしにいてほしくないとか?」
「俺は別にお前なんかいない方がのびのびできていいんだ!」
「あんたの意見は聞いてないわ」
「やってるやってる、内部進学組!神の彼女来てくれたの?わたし3年の野原マミ!今年で引退だから1年生来てくれると嬉しいんだけど」
「ど、どうしましょ牧さん、本物のマネージャーだ…わたしこんないい女感出せません」
「んー、それはよくわからないけど、俺はお前がせっせと働いてるの見ると元気出るけどな」
「当然なんだけど男子ばっかでさあ~女の子入ってほしいし、どう?飲み会とかあるし神ともいっぱい一緒にいれるよ!」
「あー先輩、それはこの子には効かないと思いますよ」
「神、自分で言って悲しくないのか?」
「えーっ!?遠征とか女子2人部屋たのしくない?ねえねえ、」
「まぶしい!うっ!」
「たぶんお前が思い描いてる女子とはちょっと違うと思うぞ。まあ悪いやつじゃないんでよろしく頼む」
「まき、お父さんみ強くない?」
なんかあんまり言い返せないまま、わたしの入部はもはや決定事項のようだ。週末新歓コンパやるよ!と野原先輩に言われたので手帳に書き込む。また3年もてめーと一緒なんか!とうなだれる信長にパンチを食らわせながら。
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私服でいいけど座敷だからスカートじゃないほうがいいかな、とまどかちゃんに声をかける野原先輩に心のなかで、スカートないから大丈夫ですよ、と突っ込みをいれた。
信長と一緒に双子みたいなかっこうで現れたまどかちゃんは、はじめての雰囲気を観察するように信長のとなりにちょっこり座っている。
「じん、」
「はい?」
「いいの?あれは」
「え?ああ、まああの二人は、2人で1人みたいなもんですから」
「そうなの?神も物好きだね」
「よく言われます」
未成年にはすすめるなよ、勝手に飲むのはとめないけど、という一応の注意をキャプテンの牧さんから受けて、手元に飲み物が回ってくる。信長とまどかちゃんは、カルピスを握ってこっちの様子を伺っているらしい。去年の自分を思い出してついつい口が緩んでしまう。引退した4年の先輩たちも来ているので、あのこ神の彼女ってマジ?ともう5回は聞かれた。新入生の自己紹介もおわり、ざわざわした歓談がはじまる。信長が神さんお酒ひとくちください!と張り切ってやってきたので、まどかちゃんを探すと、早速野原先輩に捕まっている。まあ子供じゃないし、と信長にビールのジョッキを手渡す。
「おっ!附属の清田じゃん!いけそう?」
「ぺ、苦いっす」
「はは、だよなあ」
「疲れたときに飲むとうまいんですよね」
「お前もまだ未成年じゃん」
「あれ、ばれたか」
「これが?うまいんすか?」
「お酒飲んでみたいなら甘いの頼む?レモンサワーとかファジーネーブルとか」
「なあ、彼女とどこまでいってんの」
「ゴフッ!ゲッフゲフゲフ!まっ、まっ、先輩、シー!シーです!」
「あれ、珍しい。お前ちょっと酔ってる?」
「酔ってないですよ!」
「すげぇ、酒こぇ~」
「お前確か実家だったもんなあ。附属ってことは彼女も実家?連れ込めないなあ」
「うー、それはまあ~」
「おい合宿のときとかやめてくれよ」
「それは普通にむりですよ」
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「神のどこがいいの?」
「えっ?」
飾り気のない、まさに1年生という雰囲気の、女の子。ショートヘアでがぼっとしたシャツとジーンズを着ている。この場の雰囲気にまだ戸惑っているようだけど、わたしのカルーアミルクを1口あげると、あっこれ美味しいですと同じのを注文していた。去年この場で神に彼女いるの?と聞いたとき、小さい声で「ずっと好きだった子と最近つきあい始めました」と頬を赤らめて教えてくれたのを思い出す。うーん、と首を捻ってる様子を見ると神が心配になる。
「自転車の後ろに乗せてくれるんです」
「へえ、デートのとき?」
「高校のとき神さん500本の自主練やってて、わたしも掃除とかして遅くなるんで帰り、毎日乗せて買えってもらってました」
「わ、青春!いいねえ」
「そうなんですかねぇ」
「やさしいとこがいいんだ」
「神さんはちょっと変ですけど」
「それはわかる」
「いなくなっちゃうって思ったらさみしくなっちゃって」
「っか、わいい~!!」
根掘り葉掘り聞こうとするのに、まどかちゃんは一生懸命ことばを見つけようとしてくれる。たぶんなんとなく、神の方から距離を縮めたのは伝わってくる。まどかちゃんのとなりにやってきた牧は、まどかちゃんのカルーアミルクを1口勝手に飲んで目を丸くした。
「お前これ酒じゃないか。大丈夫なのか?」
「ええ?おいしいですよ?」
「おい野原、ほどほどにしとけよ」
「もー、内部組はまどかちゃんのこと子供扱いしすぎじゃなあい?ねえ武藤」
「あ?なに?」
「うわ、武藤さん赤っ!」
「内部組がまどかちゃんのこと子供扱いしすぎってはなし」
「ええ?だってこいつイメージ5歳よ」
「えっ!ひどっ!」
「いやでも5歳だろ」
「ええ!?牧さんまでひどくないです?」
「神ががんばって手までにぎっても犬の散歩みたいなもんでしょとかぬかしてたのは誰だ、さすがに可哀想だったぞ」
「えー!ストップ」
「もう時効だろ」
「ところで神潰れてるけどいいの?」
「つぶれ?」
牧や武藤がやってくると、ふにゃあと笑った顔がかわいい。神はこれにやられたに違いない。プロデュースのしがいのある逸材の登場に、わたしは胸を高鳴らせた、うん、かわいい。