神さんになびかないマネージャー
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「ってわけなんだ!とりあえず今日だけでもいいから来てくれ!」
「バスケ部?放課後体育館行って洗濯回せばいいわけ?」
「とりあえず、今日は」
「なにそれ、詐欺の予感しかしないんだけど」
「俺はうまいこと説明できねーからよお…行けば先輩たちもいるから!たのむ!」
「別にいいけど、暇してるし」
「まじ?よし!助かるぜ!」
「まだ本当に入部するとは言ってないよ」
「わかってるわかってる!」
ノブとは幼稚園からの仲だ。家も近いし親同士も仲がいい。だからといってベタベタしているわけではないけど、腐れ縁というべきか、なんかここまでずっと近くで過ごしている。バカ猿だけど悪いやつではないし、素直で嘘がなくて、一緒にいて疲れる奴ではないと思う。むしろわたしの方がひねくれている自覚はあるから、なんだかんだかまってくるノブのことは物好きだなあと思っている。
放課後、ほらはやく、と体育館の入り口を入ってすぐ右手の、男子バスケ部と書かれた部屋にひっぱりこまれた。
「うわあ、清田が女の子連れてきた」
「本当に来てくれたのか」
大男達の迫力と、部室の何とも言えない汗のこもったような匂いに、うっとなる。こりゃあ今すぐにでも掃除を始めたい。
「清田が無理やり連れてきただろ、悪いな」
「えっと…1年の原田です、先生、あの」
「ブフ!」
「牧ドンマイ」
「おいてめー!」
「は?」
「3年の、キャプテンの牧だ。よろしく」
「…3年?」
「そうだ」
「えっと…失礼ですけどおいくつですか」
「おい!牧さんけっこう気にしてるんだからそんなに塩をふりかけるな!」
「それを言うなら塗り込むだろ、なめくじじゃないんだから」
「原田さん、俺は正真正銘17歳の高校三年生だ。留年とかもしてない」
「それは………」
ぽかんと口を空けて、次の言葉がでないわたしを、ノブがぼかすか殴ってくるので三倍くらいやりかえす。
「あの、洗濯の助っ人って聞いてきたんですけど」
「ああ、やってみて、悪くないと思ったらぜひ入部してくれ。先に言っておくが、朝もはやいし休みも少ないし、男ばっかでむさ苦しいし、遠征での試合や合宿もある。自分の時間も減ると思うし、空調もなくて夏も冬もきついと思うけど、やってくれるか」
「…なんでそんな脅すんですか」
「イメージと違うとみんなやめちゃうんだよ」
「なるほど…とりあえずこの部屋めっちゃ臭いんで、そのへんの窓開けといてもらっていいですか?洗濯回したら掃除するんで。できればロッカーの扉もあけといてください、もの取ったりしないんで」
ノブが言い渋ったのはたぶんこのことだ。牧さんは顔はこわいけど親切で、いろんな道具のありかを教えてくれる。他の部員の人たちも、でかいけど親切そうだ。わたしがあっちこっちの窓を開けて換気をするのを物珍しそうにチラチラみてくる。
「洗濯機の使い方を教えるからきてくれ」
「えっ、さすがに使えますよ」
「いや、二曹式だから。俺がこわければ神とかにしとくか」
「なんでですか、本当にこわい人はそんなこと言ってこないですよ。二曹式はさすがにはじめてなんでお願いします」
「なんというか、清田の友達ってのがよくわかった」
「友達じゃないですよ、腐れ縁です」
「ははっ」
黒い肌に白い歯がよく目立つ。なるほど初めてみたけど、二曹式ってのは使いようによっては便利なのかもしれない。用具入れのすみで山積みにされて異臭を放っていたそれを、洗濯槽に放り込む。
「拭き掃除とかしていいんですか」
「それは、ぜひ」
「あれは、あの、水をいれるのは」
「ああ、ドリンクは今1年生が交替でやってくれててな、濃さがまちまちなんで誰が作ったかわかるようになってきたんだ。清田の日は濃いぞ」
「ばかで欲張りですからね」
「余裕が出てきたらやってくれると助かる」
「なるほど。洗濯がいちばん切羽詰まってるってことですね」
「そうなんだ」
夕方、練習が終わる少し前に、今日は帰っていいから、と言われる。明日先生に紹介するから、あとできればジャージを持ってきて、と言われた。わかりました、と返事をすると、牧さんの表情が和らいだ気がする。