神さんになびかないマネージャー
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湘北はなかなかしぶとく、けっこうギリギリの勝負だった。そういう試合を勝ってきている俺たちなんだけど、まあ試合のあとは大喜びという雰囲気にもならない。
みんなでぞろぞろ電車の駅に向かって歩く。空っぽになったボトルと、こんもりしたタオルの山は、学校から近い俺達が持って帰っておくことになっている。信長は最後までいい運動量だったし、三井の逆転のスリーを止めたのは素晴らしい働きだったと思うけど、流川が途中で引っ込んでしまったもんで、決着がつかなかったという気持ちなのか、口数も少なくイライラした様子だ。まどかちゃんは信長に声もかけない。信長が持つはずだった分の荷物も持っていることに、ちょっと進んでから気付いた信長が、ばつが悪そうに近付いてきてぶんどって黙ってまた歩き始めた。ずんずん俺たちを引き離して前のほうに行く信長のことを、まどかちゃんはまるっと受け入れている。
「愛が深いねえ」
「やめてくださいよ、ほんとただの腐れ縁ですから。生まれたときからの超ド級のやつですけど」
「中学の頃もこんな感じ?」
「んー…部活もクラスも違うとそんなに学校で話すこともないですけど、まあお互い家には出入りしてるんで」
「そっか」
「陸上部の先輩と付き合ったことあるんですけど」
「は?」
「ノブのこと気にくわなかったみたいですぐ振られちゃったんです。変な話でしょ」
「それは…まあ…どうなんだろ、それでも一緒にいるんだね」
「まあ家が目の前なんでね。あいつはまあ、バカですけど嘘がないんで、信用はしてます」
「うん、そうだね」
「はー、ほんと、ノブもまとめて可愛がってくれる奇特な方が見つからないと嫁に行き遅れるのは決定ですよ。結婚式の親族席に堂々と座りそう」
「はは、それは……」
俺はどう、とはさすがに言えない。切符を買って電車にのって、悪いなという先輩や先生に手を上げて、学校の最寄り、まどかちゃんとノブと三人で降り立つ。先に歩き出した信長の、ショルダーバッグの肩紐をうしろから掴んだまどかちゃんは、まだむくれてんの?と信長を覗き込んだ。
「もーちょっと、やれると思ったんだけどよ」
「そう?わたしが思ってたよりはあんたがちゃんとすごくてびっくりしたんだけど」
「なんだそれてめー、いつもどんだけ練習見てないんだよ」
「掃除が忙しいからね」
「遅くまで頑張ってくれてるもんね」
「神さんのチャリのお陰です」
「ずりーな」
「ずるくないもん」
小学生みたいな応酬のあとは、手が出て足が出て、溝蓋に足をとられた信長がずっこけそうになったのを、俺がかろうじて止めて大笑いになった。幼馴染みの空気感は、羨ましくもあり、でもややこしくもある。
「今日おばちゃんがケーキ買ってくれてるからそっちでごはん食べるから」
「は?俺聞いてねえ」
「わたしの試合デビューだからって~わたしチーズケーキ!」
「は?なんだよそれ、デビューは俺だろうがよ!」
じゃれあいながら分かれ道のところで、神さんおつかれっすー!と手を振る2人に、もう俺はため息つくしかできない。