高砂くんの表情筋
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高砂くんは、それはそれは丁寧にことを運んだ。大きくて強面の彼に両親ははじめ驚いていたけど、真面目で腰が低い高砂くんはすぐに信任を得た。わたしに丸投げするわけではなく、でも希望はすべて叶えてくれて、ささやかな結婚式を挙げた。30すぎてるというのに、バスケ部のテーブルでおいおい泣いているまどかちゃんと清田くんをみて、高砂くんはわかりやすく目を細めた。
新卒ですぐに結婚したという神くんまどかちゃん夫妻はもう10年がすぎたところらしい。わたしたちは今からスタートだ。
せっかくのお料理が食べられないのはもったいないなあとぽつんと呟いたのを聞き付けてくれた高砂くんがプランナーさんに頼んでくれて控え室に運んでもらえることになった。そういうところが好きだ。
早い方ではない。会社には「妊娠でもした?」と不躾に投げつけてくるひともいた。うんうん、してないしてない。むしろ。子どもを産むにはもう遅いかもしれない。ここまで続けてきた仕事をやめるにももったいなく感じる。今からどうすればいいのかもわからない。だけど高砂くんが一緒にいてくれればなんか生きていける気がする。そんなことをなんとも思わずただただあったかく祝福してくれる仲間がいる人。バスケ部の人たちと会うと、わたしを値踏みしたり利用したり消費したりしないでいてくれる高砂くんと、みんなといる高砂くんに少しの矛盾もなくてお腹のそこの心の真ん中のところがほっかりあったかくなる。海外やテーマパークに行きたいという年頃でもないし、ハネムーンは検討中だ。部屋風呂のついたお高めの温泉旅館とかにゆっくりしにいきたい。自分のこの先の人生が明るくあったかく思えるようになってきた、それがまさか高砂くんのおかげだなんて高校生の頃のわたしは絶対信じないだろうな。高頭先生と宮益くんにビールを次々注がれて苦笑いするその横顔の、堀の深い目頭から皺のはいった目尻までをじっとながめて、わたしもぐいっと手元のシャンパンを飲み干した。
(おわり)
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