三井先輩に狙われる
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それは、ちょっとした接触のはずだった。俺をブロックするためにとんだ相手の足を踏んでしまい捻挫、赤木が昔やったのと同じような感じだろう。あれはもう、10年前のことだ。俺は実業団で現役を続けながら、28歳を迎えていた。
「3週間は安静にしないとねえ」
「3週間ですか」
「もう若くないですから、無理すると選手生命に関わりますよ。とりあえず2週間後にまた来て下さい」
「はい…」
ことの次第をチームと職場に公衆電話で知らせる。練習はもちろん休み、工場も肉体労働なので、2週間後の結果が出るまで休めと言われてしまった。あの時みたいだ。
駅から家に向かう、長くてゆるやかな坂をゆっくり上る。あの時みたいだけど、俺は驚くほど絶望していない。淡々と足を前に送り続けた。アパートのドアを開けると、遅かったねー、と妻のすみれの、気の抜けた声がする。晩はハンバーグですよ、と朝うれしそうに話していたっけ。
「あれ、なんですかその足」
「捻挫、3週間安静だって。無理したら選手生命にかかわるって」
「………ひさしくん、グレる?」
「……どーすんだよ俺がグレたら」
「木暮せんぱいにチクります」
「それは、こえーわ」
「赤木先輩とよーへーくんにもチクります」
「安心しろよ、ぐれねーよ。もう28だぞ」
「そう?まあ、ひさしくん養えるくらいの収入はあるんで、いつでもプー太郎になってもらっていいですよ」
「なめんな」
「…だいじょぶ?とりあえずごはん食べる?」
「おお」
「なんか、この世の終わりとかじゃないんですね」
「は?」
「ひさしくんって、バスケ取り上げたらダメな人だと思ってました」
「お前、きびしーなあ」
「優しくしてほしいの?歯抜けのロン毛、忘れてませんよ」
「うん、そうだよな」
台所にたった妻を後ろから抱き締めると、危ないから離れてよ、と肘打ちされる。なんて扱いだ。いつもの、うまい、ハンバーグが、つやっと皿の上に座っている。妻のまばたきがいつもより多い気がする。
「当てていいです?」
「は? 」
「あんまり絶望してなくて、びっくりしてるんでしょ」
「おお、まあそんなとこだ」
「大人になりましたね、三井先輩」
「うるせー、おめーもとっくにミツイだろ」
「うん、まあね」
「あの頃は可愛かったけどな、キスしただけでひんひん言ってよお」
「やば、スケベ親父の言い方じゃん。それって歯抜けのロン毛いじっていいよって意味ですか?」
「3週間は安静にしないとねえ」
「3週間ですか」
「もう若くないですから、無理すると選手生命に関わりますよ。とりあえず2週間後にまた来て下さい」
「はい…」
ことの次第をチームと職場に公衆電話で知らせる。練習はもちろん休み、工場も肉体労働なので、2週間後の結果が出るまで休めと言われてしまった。あの時みたいだ。
駅から家に向かう、長くてゆるやかな坂をゆっくり上る。あの時みたいだけど、俺は驚くほど絶望していない。淡々と足を前に送り続けた。アパートのドアを開けると、遅かったねー、と妻のすみれの、気の抜けた声がする。晩はハンバーグですよ、と朝うれしそうに話していたっけ。
「あれ、なんですかその足」
「捻挫、3週間安静だって。無理したら選手生命にかかわるって」
「………ひさしくん、グレる?」
「……どーすんだよ俺がグレたら」
「木暮せんぱいにチクります」
「それは、こえーわ」
「赤木先輩とよーへーくんにもチクります」
「安心しろよ、ぐれねーよ。もう28だぞ」
「そう?まあ、ひさしくん養えるくらいの収入はあるんで、いつでもプー太郎になってもらっていいですよ」
「なめんな」
「…だいじょぶ?とりあえずごはん食べる?」
「おお」
「なんか、この世の終わりとかじゃないんですね」
「は?」
「ひさしくんって、バスケ取り上げたらダメな人だと思ってました」
「お前、きびしーなあ」
「優しくしてほしいの?歯抜けのロン毛、忘れてませんよ」
「うん、そうだよな」
台所にたった妻を後ろから抱き締めると、危ないから離れてよ、と肘打ちされる。なんて扱いだ。いつもの、うまい、ハンバーグが、つやっと皿の上に座っている。妻のまばたきがいつもより多い気がする。
「当てていいです?」
「は? 」
「あんまり絶望してなくて、びっくりしてるんでしょ」
「おお、まあそんなとこだ」
「大人になりましたね、三井先輩」
「うるせー、おめーもとっくにミツイだろ」
「うん、まあね」
「あの頃は可愛かったけどな、キスしただけでひんひん言ってよお」
「やば、スケベ親父の言い方じゃん。それって歯抜けのロン毛いじっていいよって意味ですか?」
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