三井先輩に狙われる
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女の子というのは恐ろしいもので、子供の頃からなかなかずばっと痛いところをついてくる子だった。憧れの先輩のビデオを擦りきれるほど再生して、早くから体操服を着て朝練いってきまーす、なんて頃はまだ可愛い方だった。同じ学校に例の先輩がいるらしい、と高校入学前に学校の先生から聞いてきたときはバスケ部のマネージャーでもやるのかと思っていたら、近所のコンビニでアルバイトを始めたあたりから、我が娘ながら何を考えているのか本気でわからなくなってしまった。
インターハイをわざわざ広島まで見に行って、帰ってきたと思ったら例の三井先輩と付き合うことになったと言い出して、俺は妻と顔を見合わせた。何か弱みでも握っておどしたりしたんだろうか。
娘の彼氏の三井寿くんは、3丁目の三井さんの息子さんで、妻が町内会で清掃の役員をしているときにちょうど奥さんと一緒だった。すみれがあまり羨んではいけないからと黙っておいたけど、あとから話を聞いたらちょうど寿くんが不良になっていた時期と重なっている。若いうちは世界も狭いし、いくつかの挫折が重なって簡単に希望が見えなくなることもあるだろう。娘からは歯抜けでロン毛で暴力男と聞いていたのでどうしようか困っていたものの、休日に2人ででかける前に娘を迎えに来た寿くんは歯もあるしスポーツ刈りだし、きちんと自己紹介をして頭を下げてくれてどう見ても好青年だ。背が高くて少し迫力はある。三井家で信用ゼロだから真面目にこつこつ頑張ってるんですよねとすみれが茶々をいれるとうっせーこのやろー、と渋い顔をしていて、ほんとに口の悪いうちの娘に対してほどよいパンチを返してくれているところが、とてもありがたく感じたのを今でもよく覚えている。
就活を始めようと思うんだけどさあ、と、晩御飯の肉じゃがの、いっとう大きなじゃがいもを頬張りながら娘が話し始めたので、俺と妻は思わず手を置いた。
「雰囲気がよければなるべく同じところで長く続けたいんだよね」
「うん」
「何年かのうちに引っ越したりやめたりするのもったいないし面倒だから、最初から藤沢のほうで探そうと思ってるの。不動産屋とかよくわかんないから、アパート決めるとき父さんついてきてくれない?」
「え?」
「ん?」
「藤沢って、寿くんの」
「そうそう。まああんまり年がいかないうちに結婚できるように尻はたたいていくけど、私も仕事しっかりしたいしさ」
「アパートってことは一人暮らしするのか?寿くんのとこじゃなくて?」
「娘が一人暮しするって言ってるのに、彼氏と同棲しないのかって聞いてくる父親いる?」
「てゆーかあんた、この話寿くんにした?」
「するわけないじゃん!あの人お花畑なんだから先に向こうに話したらさっそくうちに乗り込んできて父さんと母さんに挨拶とかし始めるから面倒なのよ」
「もー、そういうところを母さんはいいと思ってるのに」
「まあ三井先輩と住んでもうまくいかないことはないと思うけど、一人暮しもたのしそうじゃない?」
「それはまあ、性格にもよると思うけど、たしかにお前は楽しめるタイプかもなあ」
「でしょ?私もそう思うんだよね」
「まあ藤沢でってのは、そうなるだろうと思ってたしわかったよ。家のことは寿くんとも話してみたら?」
「父さんのその合理的なとこほんとすきだわ」
「確かにそこはお前も似てるかもな。ただし俺はちゃんとオブラート使って生きてるけど」
「失礼な!わたしが三井先輩にオブラート使わないのは三井先輩がバカだからなんだからね。ちゃんと相手は選んでるから!」
じゃあ、というタイミングでご飯をちょうど食べ終えて娘は風呂に向かったらしい。妻はため息をついて、寿くんと三井さんに悪いわ、と呟いた。
インターハイをわざわざ広島まで見に行って、帰ってきたと思ったら例の三井先輩と付き合うことになったと言い出して、俺は妻と顔を見合わせた。何か弱みでも握っておどしたりしたんだろうか。
娘の彼氏の三井寿くんは、3丁目の三井さんの息子さんで、妻が町内会で清掃の役員をしているときにちょうど奥さんと一緒だった。すみれがあまり羨んではいけないからと黙っておいたけど、あとから話を聞いたらちょうど寿くんが不良になっていた時期と重なっている。若いうちは世界も狭いし、いくつかの挫折が重なって簡単に希望が見えなくなることもあるだろう。娘からは歯抜けでロン毛で暴力男と聞いていたのでどうしようか困っていたものの、休日に2人ででかける前に娘を迎えに来た寿くんは歯もあるしスポーツ刈りだし、きちんと自己紹介をして頭を下げてくれてどう見ても好青年だ。背が高くて少し迫力はある。三井家で信用ゼロだから真面目にこつこつ頑張ってるんですよねとすみれが茶々をいれるとうっせーこのやろー、と渋い顔をしていて、ほんとに口の悪いうちの娘に対してほどよいパンチを返してくれているところが、とてもありがたく感じたのを今でもよく覚えている。
就活を始めようと思うんだけどさあ、と、晩御飯の肉じゃがの、いっとう大きなじゃがいもを頬張りながら娘が話し始めたので、俺と妻は思わず手を置いた。
「雰囲気がよければなるべく同じところで長く続けたいんだよね」
「うん」
「何年かのうちに引っ越したりやめたりするのもったいないし面倒だから、最初から藤沢のほうで探そうと思ってるの。不動産屋とかよくわかんないから、アパート決めるとき父さんついてきてくれない?」
「え?」
「ん?」
「藤沢って、寿くんの」
「そうそう。まああんまり年がいかないうちに結婚できるように尻はたたいていくけど、私も仕事しっかりしたいしさ」
「アパートってことは一人暮らしするのか?寿くんのとこじゃなくて?」
「娘が一人暮しするって言ってるのに、彼氏と同棲しないのかって聞いてくる父親いる?」
「てゆーかあんた、この話寿くんにした?」
「するわけないじゃん!あの人お花畑なんだから先に向こうに話したらさっそくうちに乗り込んできて父さんと母さんに挨拶とかし始めるから面倒なのよ」
「もー、そういうところを母さんはいいと思ってるのに」
「まあ三井先輩と住んでもうまくいかないことはないと思うけど、一人暮しもたのしそうじゃない?」
「それはまあ、性格にもよると思うけど、たしかにお前は楽しめるタイプかもなあ」
「でしょ?私もそう思うんだよね」
「まあ藤沢でってのは、そうなるだろうと思ってたしわかったよ。家のことは寿くんとも話してみたら?」
「父さんのその合理的なとこほんとすきだわ」
「確かにそこはお前も似てるかもな。ただし俺はちゃんとオブラート使って生きてるけど」
「失礼な!わたしが三井先輩にオブラート使わないのは三井先輩がバカだからなんだからね。ちゃんと相手は選んでるから!」
じゃあ、というタイミングでご飯をちょうど食べ終えて娘は風呂に向かったらしい。妻はため息をついて、寿くんと三井さんに悪いわ、と呟いた。