三井先輩に狙われる
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だって、まさか勝つとは思わないじゃん。
あの頑丈な桜木花道が、試合中にけっこうまじっぽい怪我をしてしまったらしく、勝利の記念に写真などを撮っていたのもそこそこに、赤木先輩と小暮先輩に両脇を抱えられて、たぶん救護室に行ったんだろう。桜木くんの様子を見てくる、と駆けていった晴子に黙って帰るわけにも行かず、桜木軍団と廊下にたむろする。しょんぼりして戻ってきた晴子は、桜木くんが病院に運ばれて精密検査を受けることになったとしょんぼり告げてきた。
「大丈夫だよ晴子ちゃん、花道だし」
「そーだよ、不死身だからな」
「そうそう、不死身のバカ王だからな、普通のやつならダメかもしんないけどあいつなら大丈夫」
「そうよね、きっと大丈夫よね。」
桜木軍団が晩飯の心配を始めたので、話に混ざっていると、晴子がお兄ちゃん!と声を上げた。しまった、やばい。高宮くんの影からそっと逃げようとしたのも空しく首根っこを後ろから掴まれる。こんなことするのなんか一人しかいないじゃん。よろよろで汗だくのの三井先輩に抱き締められて、よろよろすぎてずしっと体重がかかって、二人まとめて座り込んでしまった。目があって、皮肉のひとつでも言ってやるところなのに、嗚咽でひとつもことばにならない。抱き合っておいおい泣いた。一体どうしてこんなに涙が出てくるのかもわからない。三井先輩も震えてる気がする。びくともしないほどの力に、今までどれだけ大切に扱われていたのかを思い知る。少しはなれたところから、先に帰ってるぞー、と木暮先輩のやさしい声が聞こえる。
ようやく息を整えて顔を上げると、三井先輩の顔が思ったより近くて動けなくなる。汗だくで、眉間に深く皺が寄ってる。
「これ、飲みますか」
「…いるけど、それより」
先輩の汗の匂いが染み込んだ大きなタオルをばさっと頭からかぶせられる。広い会場の喧騒が遮断されてふたりきりになったみたいだ。
「あ、ピンク」
「は、」
噛み付かれた、と言った方がいいか。
体の全部が心臓になったような、時間が止まったような。熱くて湿っぽくて、もう倒れそうだ。
「なにすんのこんな往来で」
「…次はこっちって言ったろ 」
「だからって、」
「帰るぞ、ほら」
「は?そんなボロボロでなに保護者ぶってるんですか」
「つーかお前どこ泊まってんの」
「すぐそこの、なぎさっていう古い民宿です」
「それたぶん、俺らの宿のすげー近くだ。いつまで居られるの」
「んー、勝ってる間は」
「そーかよ」
なんでそんな、俺が起こしてやってるみたいな顔できるんだ、へろへろのくせに。手首をぎゅっと掴まれて、雨上がりで蒸し暑い曇り空のしたにのろのろ歩いていく。
「どーしてくれるんですか、新しいルージュだったのに」
「そりゃ悪かったな。でも落ちる前にちゃんと見たから」
「それに、もう、三井先輩のこと、めちゃめちゃ好きになっちゃったじゃないですか」
「は、」
「責任とってくださいよ」
「おせーよバカ、上等だ」
「赤点男にバカって言われたくないです」
「お前まじで喧嘩売ってるだろ」
「わたし成績いいんで、文系なら教えますよ」
「まじか…くそ…」
大きな通りを一本ずつ曲がって、段々道が細く、人通りがなくなる。
「俺ら、ここ」
「まじですか。ほんのちょっと裏のとこです」
「ああ、走りにいったときみた」
「じゃあまた明日、頑張ってください」
「おー、あ、」
ぐっと腕を引かれて、くそ、どこにこんな力残してんの、あっこれまたキスされるんじゃん。ぎゅっと目をつぶる直前に見えた表情があんまりにも欲を含んでいて、心臓がぎゅっとなる。
「おーい帰ったか、あ!」
完全に呑気な木暮先輩が顔を出して、そして消えていった。見られたんですけど、という抗議の視線を送ると、ぶっさいく、いややっぱかわいーわ、とまったく返事になってない返事をおいて、宿の中に消えていった。三井すまん!と木暮先輩のわたわたした声がきこえてくる。いやいやだから往来であんなことしてくる方が悪いってば。
あの頑丈な桜木花道が、試合中にけっこうまじっぽい怪我をしてしまったらしく、勝利の記念に写真などを撮っていたのもそこそこに、赤木先輩と小暮先輩に両脇を抱えられて、たぶん救護室に行ったんだろう。桜木くんの様子を見てくる、と駆けていった晴子に黙って帰るわけにも行かず、桜木軍団と廊下にたむろする。しょんぼりして戻ってきた晴子は、桜木くんが病院に運ばれて精密検査を受けることになったとしょんぼり告げてきた。
「大丈夫だよ晴子ちゃん、花道だし」
「そーだよ、不死身だからな」
「そうそう、不死身のバカ王だからな、普通のやつならダメかもしんないけどあいつなら大丈夫」
「そうよね、きっと大丈夫よね。」
桜木軍団が晩飯の心配を始めたので、話に混ざっていると、晴子がお兄ちゃん!と声を上げた。しまった、やばい。高宮くんの影からそっと逃げようとしたのも空しく首根っこを後ろから掴まれる。こんなことするのなんか一人しかいないじゃん。よろよろで汗だくのの三井先輩に抱き締められて、よろよろすぎてずしっと体重がかかって、二人まとめて座り込んでしまった。目があって、皮肉のひとつでも言ってやるところなのに、嗚咽でひとつもことばにならない。抱き合っておいおい泣いた。一体どうしてこんなに涙が出てくるのかもわからない。三井先輩も震えてる気がする。びくともしないほどの力に、今までどれだけ大切に扱われていたのかを思い知る。少しはなれたところから、先に帰ってるぞー、と木暮先輩のやさしい声が聞こえる。
ようやく息を整えて顔を上げると、三井先輩の顔が思ったより近くて動けなくなる。汗だくで、眉間に深く皺が寄ってる。
「これ、飲みますか」
「…いるけど、それより」
先輩の汗の匂いが染み込んだ大きなタオルをばさっと頭からかぶせられる。広い会場の喧騒が遮断されてふたりきりになったみたいだ。
「あ、ピンク」
「は、」
噛み付かれた、と言った方がいいか。
体の全部が心臓になったような、時間が止まったような。熱くて湿っぽくて、もう倒れそうだ。
「なにすんのこんな往来で」
「…次はこっちって言ったろ 」
「だからって、」
「帰るぞ、ほら」
「は?そんなボロボロでなに保護者ぶってるんですか」
「つーかお前どこ泊まってんの」
「すぐそこの、なぎさっていう古い民宿です」
「それたぶん、俺らの宿のすげー近くだ。いつまで居られるの」
「んー、勝ってる間は」
「そーかよ」
なんでそんな、俺が起こしてやってるみたいな顔できるんだ、へろへろのくせに。手首をぎゅっと掴まれて、雨上がりで蒸し暑い曇り空のしたにのろのろ歩いていく。
「どーしてくれるんですか、新しいルージュだったのに」
「そりゃ悪かったな。でも落ちる前にちゃんと見たから」
「それに、もう、三井先輩のこと、めちゃめちゃ好きになっちゃったじゃないですか」
「は、」
「責任とってくださいよ」
「おせーよバカ、上等だ」
「赤点男にバカって言われたくないです」
「お前まじで喧嘩売ってるだろ」
「わたし成績いいんで、文系なら教えますよ」
「まじか…くそ…」
大きな通りを一本ずつ曲がって、段々道が細く、人通りがなくなる。
「俺ら、ここ」
「まじですか。ほんのちょっと裏のとこです」
「ああ、走りにいったときみた」
「じゃあまた明日、頑張ってください」
「おー、あ、」
ぐっと腕を引かれて、くそ、どこにこんな力残してんの、あっこれまたキスされるんじゃん。ぎゅっと目をつぶる直前に見えた表情があんまりにも欲を含んでいて、心臓がぎゅっとなる。
「おーい帰ったか、あ!」
完全に呑気な木暮先輩が顔を出して、そして消えていった。見られたんですけど、という抗議の視線を送ると、ぶっさいく、いややっぱかわいーわ、とまったく返事になってない返事をおいて、宿の中に消えていった。三井すまん!と木暮先輩のわたわたした声がきこえてくる。いやいやだから往来であんなことしてくる方が悪いってば。