三井先輩に狙われる
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おかしい。もう10日も三井先輩に会ってない。陵南との試合で、途中ぶっ倒れて交替したあと、ベンチに座っている姿を最後に、わたしはあの人を見ていない。学校中がバスケ部の全国出場に盛り上がっているけど、わたしにとっては嘘みたいだ。
バイト先に来ないのはもちろん、いつものコートにもいない。わたしに会いたくなくなっちゃったんだろうか。それとも練習に集中したいんだろうか。晴子の話では部活には元気に参加しているようなので、体育館に行けば生存確認はできると思うけど、本人がいやがってたら人前でどうこうするのも悪い。
そういえば前に家は3丁目と聞いていたので、バイトの帰りにさりげなく回り道をしてみる。
「うそ!」
「お、お前」
「3丁目って言ってたけどまさか会えちゃうとは」
「ストーカーじゃねーか」
「三井先輩にだけは言われたくないですけど」
ランニングから戻ってきたらしく、少しずつ後ずさりする先輩に、1足飛びに近づいて距離を縮める。狼狽えているらしい、三井先輩の手を、勇気を出して握った。
「そりゃあ、三井先輩がぶっ倒れたの見たときは、もし先輩がぐれずに部活に打ち込んでて体力あればってちょっとだけは思いましたよ」
「てめー、塩塗り込みに来たのか」
「でも、もう諦めました。やっちゃったことはなかったことにはならないし、でもそれもひっくるめて、めちゃめちゃかっこよかったです」
「…そーかよ…」
「なんでわたしのこと避けてるんですか」
「かっこわりーとこ見せちまって…お前の顔見てもなんて言えば良いのかわからなかった」
「は?」
「付け焼き刃にしかなんねーかもしれねーけど、インターハイまでに少しでも体力つけてーんだ」
「インターハイ、見に行きますから」
「なに言ってんだ、広島だぞ」
「先輩避けるためにバイトしまくってたらお金たまっちゃったんで。かっこいいの、期待してます」
「なあ」
「はい?」
「まだ、中学生の俺のほうが、かっこいいか」
「うーん…」
わたしが手首を掴んでるはずだった。反対の肩に手が添えられる。大きくて、あったかくて、ちょっとこわいけど優しい。
「武石中の三井先輩は、わたしにとっては遠くてきれいな宝物なんでたぶん一生わすれないですけど、でもなんか今の三井先輩、人間くさくてとっくに一番かっこいいです」
「お前なあ…」
人を殴っていたのと同じものとは思えないほど、やさしい掌が、肩から背中に回る。ちゃんとどきどきしてくれているのもわかる。汗でしっとりした胸に耳をよせる。
「ほんとは、その、キスしてえ」
「…そ、れは、早くないですか」
「ちゃんと待ってるだろ」
毎朝頑張って整えている前髪を、ぺろんとめくられて先輩が目を閉じるのが見えたのでこちらも反射的に目をつむる。おでこにびしっと衝撃を感じて飛び退くとしたりがおの三井先輩と目が合う。
「ヤンキーのでこぴんじゃないですか」
「なんだよそれ。次はこっちもらうからな。ほらいくぞ」
「え、どこに」
「送るっつってんだよ」
差し出された手と、先輩の赤い顔を見比べて、思いきって指を絡めた。
バイト先に来ないのはもちろん、いつものコートにもいない。わたしに会いたくなくなっちゃったんだろうか。それとも練習に集中したいんだろうか。晴子の話では部活には元気に参加しているようなので、体育館に行けば生存確認はできると思うけど、本人がいやがってたら人前でどうこうするのも悪い。
そういえば前に家は3丁目と聞いていたので、バイトの帰りにさりげなく回り道をしてみる。
「うそ!」
「お、お前」
「3丁目って言ってたけどまさか会えちゃうとは」
「ストーカーじゃねーか」
「三井先輩にだけは言われたくないですけど」
ランニングから戻ってきたらしく、少しずつ後ずさりする先輩に、1足飛びに近づいて距離を縮める。狼狽えているらしい、三井先輩の手を、勇気を出して握った。
「そりゃあ、三井先輩がぶっ倒れたの見たときは、もし先輩がぐれずに部活に打ち込んでて体力あればってちょっとだけは思いましたよ」
「てめー、塩塗り込みに来たのか」
「でも、もう諦めました。やっちゃったことはなかったことにはならないし、でもそれもひっくるめて、めちゃめちゃかっこよかったです」
「…そーかよ…」
「なんでわたしのこと避けてるんですか」
「かっこわりーとこ見せちまって…お前の顔見てもなんて言えば良いのかわからなかった」
「は?」
「付け焼き刃にしかなんねーかもしれねーけど、インターハイまでに少しでも体力つけてーんだ」
「インターハイ、見に行きますから」
「なに言ってんだ、広島だぞ」
「先輩避けるためにバイトしまくってたらお金たまっちゃったんで。かっこいいの、期待してます」
「なあ」
「はい?」
「まだ、中学生の俺のほうが、かっこいいか」
「うーん…」
わたしが手首を掴んでるはずだった。反対の肩に手が添えられる。大きくて、あったかくて、ちょっとこわいけど優しい。
「武石中の三井先輩は、わたしにとっては遠くてきれいな宝物なんでたぶん一生わすれないですけど、でもなんか今の三井先輩、人間くさくてとっくに一番かっこいいです」
「お前なあ…」
人を殴っていたのと同じものとは思えないほど、やさしい掌が、肩から背中に回る。ちゃんとどきどきしてくれているのもわかる。汗でしっとりした胸に耳をよせる。
「ほんとは、その、キスしてえ」
「…そ、れは、早くないですか」
「ちゃんと待ってるだろ」
毎朝頑張って整えている前髪を、ぺろんとめくられて先輩が目を閉じるのが見えたのでこちらも反射的に目をつむる。おでこにびしっと衝撃を感じて飛び退くとしたりがおの三井先輩と目が合う。
「ヤンキーのでこぴんじゃないですか」
「なんだよそれ。次はこっちもらうからな。ほらいくぞ」
「え、どこに」
「送るっつってんだよ」
差し出された手と、先輩の赤い顔を見比べて、思いきって指を絡めた。