三井先輩に狙われる
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聞き覚えのある声がして目をやると、あいつが木暮の腕を引っ張って大股でずんずん歩いていくところだった。なんだ、あいつら知り合いなのか?さすがに盗み聞きまではできないが、2人が消えていった階段下の角が気になる。
しばらくすると木暮が一人で戻ってきた。ぽかんと口を開けている俺を見て、困ったように笑うと肩を軽くグーで小突かれた。な、んなんだ。
見張ってるとか言ってたくせにあいつは練習も見にこねえ、いつものコートにもこねえ。数日顔を見ないまま、とうとう練習帰りにあいつのバイト先のコンビニに来てしまった。
「げ、ストーカー」
「うるせー、何時までだ」
「あと10分です」
「待ってる」
「帰ってください」
「待ってるから」
「仕方ないな、殴られたらやだし」
「ハン、そーだな」
「げ、本物のヤンキー座りだ」
「おう、待ったぞ」
「これ、見切りなんで」
差し出された塩豆大福にかぶりつくと、となりで川本も同じようにしている。
「お前、なんで木暮と仲良いんだよ」
「そんなこと聞くために来たんですか?そりゃあ小暮先輩が誰かと違って善良な大人だからです」
「はあ!?なんだそれ!何話してたんだよ」
「お喋りなのは三井先輩の方じゃないですか」
「は!?」
「わたしと小暮先輩の秘密なんで、教えません」
「くそ、木暮も同じこと言ってやがった」
「全部三井先輩のせいですからね。他に共通の話題ないし」
「それでもむかつく」
「三井先輩って、わたしが思い通りにならないから面白がってからかってません?」
「お前、まだそんなこと言ってるのか」
「付き合ったと思ったら捨てられたりしたらわたし耐えられないなー」
「は!?」
「不良時代のことネチネチ言ってくるのも私だけだから、負けず嫌いで黙らせたいだけとか」
「うっ、」
「木暮先輩にもいいましたけど」
「おー」
「三井先輩が木暮先輩だったらとっくに好きになってたのになー」
「は!?なんだそれ!確かに木暮はいいやつだけどな、つーかそれ、木暮はなんて!」
「それは!」
ひみつです、と一気にトーンを下げた、頬が、暗くてもわかるほど赤い。
別に俺の彼女って訳じゃない。おれがこいつにこだわる理由だってよくわからない、だけど、そんな顔させてるのが俺じゃなくて、よりにもよって木暮ってどういうことなんだよ。
「お前さ」
「はい?」
「俺が暴力男に戻るのがいやなのか?それとも、付き合ってうまく行かないのがいやなのか?」
「それは、」
こつこつと、ローファーの靴底が地面を叩く音が止まる。振り返ると、眉間にシワをよせて、真剣に言葉を選んでいるらしい。ぶさいくで、かわいい。
「なんてゆーか、いやっていうより、こわいっていう方が近いです」
「こわい、」
「でも、両方あたってる」
「おお」
「わたし、彼氏とかいたことないし、三井先輩、イメージよりうんと大人っぽいし。中学生の三井先輩にしがみついたまま、こうやって憎まれ口叩くのださいですかね。でもわたし、変わっちゃうのこわいです」
「あー、」
伸ばした掌を背中に回すと、細くて軽い体が簡単にこっちに倒れかかってきた。顔を見られないように、頭の上に顎をのせる。
「殺し文句じゃねーか」
「先輩やっぱバカになっちゃったんですか」
「お前ちっちゃいな」
「なんか慣れてる、むかつく」
「ばか、心臓飛び出そうだわ」
バコバコ主張する心臓のあたりに頭を押し付けると、強ばった体から少しずつ力が抜けて、それから俺のシャツの裾の、腰のあたりを小さな掌がつかむ。
「お前はそのままでいいからよ、ちゃんと見とけよ」
「…はい」
「こっちはとっくに惚れてんだから、覚悟しとけ」
「…くっさ!」
「は!?」
「よくそんなくさいこと言えますね、あんなに大きく道を踏み外しておいてその自信どっから出てくるんですか!」
「うるせー!帰るぞ!」
「言われなくても」
「おー三井、機嫌いいな。あの子と何かあったのか?」
「木暮…お前あいつに何いったんだ」
「特別なことは何も…ああ、三井のことが好きなんだなっていった気がする」
「そ!れ、か………」