笠松くんと終わらない日々
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「変じゃないか」
「なにが」
「青葉だよ。今日全然話しかけてこないぞ」
「確かにそうだが…疲れてんじゃねえのか?」
「あ、実はインターハイのとき、」
森山に言われて気付いた、あの明るいおしゃべりが今日は一度も話しかけてこない。確かに、と首を捻ると小堀があの日の話をはじめる。
あのあと俺の悪口大会だったんだと思っていた。 まさかあいつが。
「あいつなりにお前のこと慕ってるんだよ」
「………おお」
「礼くらい言ってもいいんじゃないのか」
「わかってる、帰りに話す」
休憩終わりに、ふと目があった。俺がそらす前にあいつが逃げたのは初めてだ。
なにかを振り払うような、そんな素振りに見えるのは俺だけか。いつもは自主練に付き合うマネージャーが、さっさと切り上げていった。小突いてきた小堀に部室と体育館の鍵を預けて、女子更衣室のドアが視界に入る廊下の隅に座り込んだ。
「あ、笠松さん」
「おー」
「……残らないんですか」
「…なあ」
「…はい」
「小堀に聞いた。ありがとな」
「えっ!小堀さんのおしゃべりめ」
「ひでーな」
「むしろすみません、角を立ててしまったのでは。なにか言われたりしてませんか」
「ねえよ。心配すんな」
「それはよかったです。さすがにまだ、元気は出てないですかね」
「もういい。人の気持ちなんかそうかんたんに変わんねーし、周りに何言われても俺は俺を許せねえから。これはやっぱ、リベンジすることでしか変えらんねーよ。」
「そうですか」
「お前にも心配かけたな」
「いえ、でも、その、少しでもお役に立てるように、頑張ってもいいですか」
「ったりめーだろ!おい、」
いつの間に、こいつと話すのなんてへっちゃらになってたんだ。青葉は唇を噛み締めて、くしゃくしゃの顔で睨み付けてくる顔があんまりひどくて、ブッサイクだなと笑ってしまった。途端、大きなめんたまから涙がポロボロ流れはじめる。
「お、おい、」
「すびばせん……」
「なんだよ、よくわかんねーけど悪かった、元気出せよ、」
涙を止めようとしているのがよくわかって、でも俺は気の利いたことのひとつも言えない。つむじに手を伸ばしかけて引っ込めた、その手で自分の頭を掻く。
送っていく、と言うと、いえ戻ってください、と、俺の肩をぐっと押してきた。下駄箱から外にゆっくり向かう背中を見送って体育館に戻ると、なんで戻ってきたんだと小堀森山をはじめとする同級生に詰め寄られた。
「マネージャー、あのまま帰したのかよ」
「あれはお前!抱きしめるとこだろ!」
「……てめーら、のぞいてたんか」
「す、すまん……」
「マネージャーの泣き顔がガチすぎて好感度が爆上がりしたわ」
「は!?意味わかんねーわ!!」