笠松くんと終わらない日々
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入学式の前の日、あいつの家で荷物を受け取って、最寄りの駅まで歩く。ポケットに隠したそれを握りしめながら、何て言おうか俺は決められずにいる。電車は東京に向けて進んでいく。揺られながらまたポケットに手をいれた。
快速を降りて大きな駅で乗り換えをして、そこから20分。緑が丘東というこぢんまりした駅で降りる。
「晩御飯、どうします?なんか作りますよ」
「近くの飯屋に連れてってやるよ、合格祝いだ」
「ほんとですか?わーい!ねえここ、プラの引き出し置きたいです」
「いいぞ、今から買いに行くか」
「笠松さん」
後ろから抱きついてくるのは、俺のげんこつが届かない上に引き剥がされにくいことを気付いてるからだと思う。背中におでこをぐりぐりすりつけて、やっぱり犬みたいだ。
「いいの、ほんとに」
「おめーな、散々外堀埋めまくって、こんだけ荷物運び込んどいてそんなこと聞くなよ」
「逃げ道なくしすぎました?」
「そんなんいらねーわ」
ポケットに、もう一度手をいれて、小さく固いそれを握った。手をつかんでぐるっとまわったので、青葉は面食らっている。
「これ」
「え?」
「これ、お前の分、鍵」
「かぎ、」
「今日からお前んちになんだろ」
「っ!笠松さん!」
「あんだよ」
「好きです、だいすき」
「うん、あー、うん。」
「お前、こっち使って」
「えっ、ベッドは家主が使ってください。私は床のお布団で」
「はやっ!まあじゃあとりあえず今日はな」
お腹いっぱいに飯を食って、電気消して。カーテンから漏れてくる夜の光が今日はやけに明るい。
「笠松さん寝ました?」
「…起きてる」
「めっちゃ寒いんで入れてください」
「は?もう4月だぞ」
「まだ4月です」
「仕方ねーな」
壁際によって、布団に入ってきた青葉がじっとしたのを確かめて背中を向ける。
「やば、笠松さんほかほか」
「お前のその足はなんだよ、風呂入っただろ」
「冷え性なんです。めっちゃあったかい」
俺の足の間に、後ろから冷たい足を差し込んで絡ませて、天国だわとか言われても俺は冷たくてたまったもんじゃない。ぐりんと反転して、青葉のしっとりした頬をつねる。
「いはいれふ」
「俺がつめてー」
「え、ケチ」
「青葉あっち向けよ」
「こう?」
「そ、これでいいだろ」
「ふふ、あったか」
「俺もあったけ。でも毛布買いに行けよ」
「なんで、毎日こうしてくれないんですか」
「まあ、それでもいいけど」
反対を向けた青葉に、背中から腕を回して、ああこれならほどよく俺もあったかい。今日はたくさん歩いたし、天気もよかったから少しつかれた。ふわふわあったかい青葉のにおいがして、まぶたが重たくなってきた。