笠松くんと終わらない日々
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合格発表はわざわざ見に行かなくても、センター利用なんだから点数的に絶対受かっていると可愛げのない娘より、たぶん俺の方がよほどソワソワしていたと思う。郵送されてきた大きな封筒がずっしりしているのを確かめて、開封する娘に文句を言われながら覗き込むと合格の文字。妻もにこにこして喜んでいる。その日の晩御飯はハンバーグになった。
「笠松くんには連絡したの」
「うん、メールで」
「なんだって」
「おめでとうって。荷物をちょっとずつ運び込むって言ったら勝手にすればって」
「本格的に住み着く気だな」
「だって大学の図書館夜の10時まであいてるの、近くに住まない手はないでしょ」
「こんなあっけらかんと同棲宣言されるとはいどうぞとしか言えないよね。どうすんの、家賃半分だそうか」
「笠松さんのおかあさんがそんなのいいって。早くバイト見つけて、ちゃんと自炊するから」
「そーゆーもんなの?一応毎月振り込むから、大事に使ってね」
「ありがと父さん」
ちょっとずつ洋服とか、持っていくから、と楽しそうに話す娘、ついこないだ生まれたと思ってたんだけどなあ。たぶん笠松くんが、その人なんだろうな。最近には珍しい初なところを隠しきれない青年に、俺はまあこの子なら娘をまかせてもいいかと思っている。あちらのお母さんともすでに仲良くしているようで、外堀の埋めかたに恐ろしさを感じたりもする。いよいよ明日入学という日、最後の仕上げの大荷物を運ぶためと、笠松くんが玄関にあらわれた。
「ごぶさたしてます」
「なんかほのか住み着く気満々だろ?迷惑じゃない?」
「それは、ないっすけど…俺の方こそ、いいんですか」
「うん、まあ、よくわかんない東京の男とか連れてこられても困るけど、笠松くんのことは信用してるから、できればずっと一緒にいてやって。あ、俺の電話番号教えとくから、お金のこととか苦情とかあったら受け付ける」
「ありがとうございます。紙とペンかりていいっすか、あ、住所と……俺の番号も。なんかあったら連絡ください」
「なにこそこそやってんの2人!笠松さんこれ持って!」
「うわ、なんだこれ」
「スーツ、明日着るやつ!あとはパジャマとか」
「はいはい、」
「じゃ、行ってきます!」
「うん、たまには帰っておいで」
「はーい!」
じゃあ、と言うと、笠松くんはまた、深々と頭を下げてでていった。妻と二人ってのは、まあ遠征や合宿なんかのときにはあったけどしばらくずっとと思うと変な気分だ。