笠松くんと終わらない日々
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「あっ、小堀さん!笠松さん!」
教室の入り口で青葉の声がすると、俺は右手をあげて笑顔を向けながら、しれっと腰をあげようとする笠松の腕を左手でつかむ。マネージャーが入部してから、一体何度目だろうか。
「離せ」
「なんで?」
「なんでって、」
「ちょうどよかった!週末の練習試合のことなんですけど監督が、」
「こ、小堀聞いといてくれ……」
「おい笠松」
「ちょっと!笠松先輩!」
「べべ、べんじょだ!」
「さっきトイレから出てきましたよね?」
「………て、てめぇ……」
俺の手を振りほどこうとする笠松の、空いてる方の腕を、青葉ががっちり掴んだ。助けを求めるようにこっちに視線を送ってくる笠松の正面にマネージャーが回り込む。ほんとにガッツあるなあ。
「いい加減にしてください、もう1か月たつんですけど」
「なっ…」
「別に女だと思ってもらわなくて結構ですから!支障ない程度に喋ってください!なんなんですか!アレルギーですか!」
「そ、そうだ…………」
「んなわけないでしょ!!!私の何をそんなに意識してるのか知りませんけど!一周回ってドスケベなんじゃないですか!?あーいやらしい!ねえ小堀さん!!」
「…やるなあマネージャー」
「てめー……ふざけんな………」
「いいんですか!?笠松さんはめっちゃスケベってでっかい声でいいふらしますよ!」
「……もう十分でけーわ……」
強張っていた体から力が抜けたのがわかった。手を離すと笠松は、頭を抱えて座り込む。
「で?練習試合がなんだって?」
「はい、これ監督からです」
おー、と、思わず声をあげる。すばらしいガッツだ。様子を見ていたクラスメイトたちも驚いたようだった。にこやかに週末の相談をはじめた青葉だけど、さっき眉間にシワを寄せて笠松を睨み上げたあの表情は、笠松そっくりだったよ。と、言ったら笠松は怒るだろうか。
笠松が、スケベかどうかは置いておいて、マネージャーはかわいいよ。なんだかリスみたいだ。
***
「おい笠松、見てみろよ」
「はい?なんすかそれ」
「ああ、これ?」
「うわ、すげ」
練習試合からしばらく、ホワイトボードにスコアと一緒に、試合に出たメンバーのいろんな数字が書いてある。パスの数、成功率、相手、シュート……
今年は全国制覇を狙えるチーム。3年生は気合いが入ってるし、ポイントガードの腕を買われている笠松も、先輩達に声をかけられ立ち止まっている。
「マネージャーがやってくれたみたいだな、この字からして」
「ま、ねーじゃー、」
「なかなかやるな、あの子。お前にも文句つけるくらいだしな」
「あー、いやあ」
さすがに先輩相手にブチキレるわけにもいかず、適当に相手していると思った。ふと顔をあげると、笠松はホワイトボードをまっすぐ見つめて、口角をあげて悪い顔をしている。なーんだ、やっぱりそっくりなんじゃないか?