笠松くんと終わらない日々
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「あれ、青葉なんか、ひさしぶり」
「え?あれ?なんかそんな感じしますねえ」
小堀とマネージャーの間の抜けた会話を背中に聞いて、ロッカーに向かってちょっとずっこける。部室のカレンダーは昨日めくって11月、ウィンターカップの予選を勝ち抜いて出場決定した翌週の、土曜の午前練が今おわって、部室。
中間テストの期間に入るより前から、マネージャーは朝1番に体育館をあけていた。そんなに早い時間だと校内にほとんど誰もいないので、ジャージで登校して部室によらずにそのまま電気をつけに行っているようだ。俺たちが来る頃にはもう洗濯を取り込みに行っている。なかなか顔を合わせることはない。俺こそ、休憩のタイミングと自主練の予定を確認するために必ず一度はとっつかまえて声をかけるものの、最近は1年生の自主練にみっちり付き合っていて、そのために放課後も休みなく動いているようだった。部室でパックのジュースをすする青葉をみるのは、それこそ1ヶ月以上ぶりじゃないだろうか。
「斎藤のスリー、良くなってきたなあ」
「そりゃあ、森山さんのフォームお手本にされたら困りますからね」
「中村もほめてたぞ」
「まて、今オレをディスる声が聞こえた」
「いやいや、森山さんはあれで入ってるんで、ほめてるんです」
「え、そーお?いくらでもほめていいぞ」
「あ、マネージャー、これ」
気付いたらそろそろ、手が荒れてくる季節だった。ドラッグストアーの売場でふと、マネージャーのぼろぼろの指先を思い出した。ロッカーに置いたままになってた、オレのと同じ緑のチューブを投げて渡す。
「あ、去年の」
「こないだ買ったんだけど、そういえばお前も使うんだったと思って」
「えっ、もらっていいんですか?」
「おー、使っとけよ」
「わ、家宝にします」
「あほか、使え」
「ふはは、ありがたくちょうだいいたします!」
でかい口開けて、頬を赤くして、さっそくクリームを塗り始めたマネージャーの、髪の毛をぐしゃぐしゃに混ぜて、目をそらした。