宮ンズのマドンナは女バスのエース
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最後の春高は、2日目の初戦を見に行った。烏野高校なんて初めてきいたけど、結果としては負け。双子、やっぱりバレーをしておる姿がいいと思う。あの殺気、息の合った攻撃、足首がどうとか言ってる奴とは思えない。緊張と、コートから溢れ出る熱量に、心臓をわしづかみにされた。今までは自分の大会のついでに見ていたけど、わざわざこのために新幹線にのって東京まで来た甲斐は間違いなくあった。
尾白をはじめ、バレー部のやつはでかい、のイメージがつよい。背が高いだけでなく肩幅とか厚みとか腕の太さとか。だけど2階席からアリーナの選手を見下ろすと、みんな良い体つきのせいか馴染んでしまって見える。北くんが入ると一気にみんなが縮み上がるのは伝わってくるが、尾白に大耳くん、赤木くんも、3年生は淡々と強い。点をとったからといって死ぬほど喜ぶわけではなくしかし、実力で点をとっている姿は単純にかっこいい。隣の席に座ったおばあちゃんが上着の下に来ていたセーター、よく見ると「信介頑張れ」の文字が。尾白や黒須先生の声で脳内再生される「信介」の声。なんと北くんのおばあさんだった。試合が終わるとおばあちゃんは新幹線で帰るらしく、わたしも同じ予定なので同行させてもらうことにした。
「おばあちゃん、帰る前に北くんの顔見ていこか」
「そんなん、信ちゃんに迷惑かからへんかな」
「北くんはそんな風に思う人じゃないですよ。わたしも友達の顔見て帰りたいから、つきおうてくれません?」
「ほんまに?ええかな?」
会場の通路を回ると、見慣れたエナメルバッグのかたまりと大男。試合後のミーティングもすんで観戦の段取りなどを各自相談しているようだった。ばぁちゃん、と声をあげた北くんが、ワンテンポ遅れて隣のわたしに気付いて尾白の肩を叩いてくれた。
「沢田さん、ばあちゃんとおってくれたん?」
「偶然隣だったの。尾白の顔見て帰ろと思っておばあさん付き合わせちゃった。」
「あれ?信介のばぁちゃんや。ちわっす」
「あらぁ、あなたかっこよかったわねぇ」
「やめてぇな、信介に妬かれてしまう」
「信ちゃんもかっこよかったよ。今までよく頑張ったね」
「うん、ありがとうばあちゃん」
「ほな、ばあちゃん帰るし、信ちゃんたちも気をつけてな」
「…沢田さんはアランに用事あったんやないん?」
「うん、そのつもりだったんだけど、顔見たらなんも思い付かなくなっちゃった」
「なんやねん!ばあちゃん巻き込んだだけかいな」
「顔見れたからええねん、また学校でな」
「おん、勉強頑張りや」
差し出された拳に自分の拳を合わせて
踵を返して歩き始める。
帰り道はおばあちゃんが北くんの昔の話をたくさんしてくれて、大笑いしたのでいいリフレッシュになった。北くんはどこか機械的というか、弱味が見えない人のように思っていたけど、おばあちゃんからはまったく違うように話を聞いて、なんだか胸が温かくなった。ここでだいじょうぶよというおばあちゃんと最寄りの駅で別れると、ひんやりして薄暗い帰り道を歩きながら、さっきまで東京にいたのが嘘みたいだ、とどこか落ち着いている自分がいて、でもまだ残る胸が締め付けられる感覚が、それはほんとうだと何度も教えてくれる。なんかうまいこと、気の利いた事言えればよかったのに。尾白は、そうだ、勉強頑張れって言ったんだ。深呼吸して、家までの道を走りだす。私は机の前に座らないといけないから。
尾白をはじめ、バレー部のやつはでかい、のイメージがつよい。背が高いだけでなく肩幅とか厚みとか腕の太さとか。だけど2階席からアリーナの選手を見下ろすと、みんな良い体つきのせいか馴染んでしまって見える。北くんが入ると一気にみんなが縮み上がるのは伝わってくるが、尾白に大耳くん、赤木くんも、3年生は淡々と強い。点をとったからといって死ぬほど喜ぶわけではなくしかし、実力で点をとっている姿は単純にかっこいい。隣の席に座ったおばあちゃんが上着の下に来ていたセーター、よく見ると「信介頑張れ」の文字が。尾白や黒須先生の声で脳内再生される「信介」の声。なんと北くんのおばあさんだった。試合が終わるとおばあちゃんは新幹線で帰るらしく、わたしも同じ予定なので同行させてもらうことにした。
「おばあちゃん、帰る前に北くんの顔見ていこか」
「そんなん、信ちゃんに迷惑かからへんかな」
「北くんはそんな風に思う人じゃないですよ。わたしも友達の顔見て帰りたいから、つきおうてくれません?」
「ほんまに?ええかな?」
会場の通路を回ると、見慣れたエナメルバッグのかたまりと大男。試合後のミーティングもすんで観戦の段取りなどを各自相談しているようだった。ばぁちゃん、と声をあげた北くんが、ワンテンポ遅れて隣のわたしに気付いて尾白の肩を叩いてくれた。
「沢田さん、ばあちゃんとおってくれたん?」
「偶然隣だったの。尾白の顔見て帰ろと思っておばあさん付き合わせちゃった。」
「あれ?信介のばぁちゃんや。ちわっす」
「あらぁ、あなたかっこよかったわねぇ」
「やめてぇな、信介に妬かれてしまう」
「信ちゃんもかっこよかったよ。今までよく頑張ったね」
「うん、ありがとうばあちゃん」
「ほな、ばあちゃん帰るし、信ちゃんたちも気をつけてな」
「…沢田さんはアランに用事あったんやないん?」
「うん、そのつもりだったんだけど、顔見たらなんも思い付かなくなっちゃった」
「なんやねん!ばあちゃん巻き込んだだけかいな」
「顔見れたからええねん、また学校でな」
「おん、勉強頑張りや」
差し出された拳に自分の拳を合わせて
踵を返して歩き始める。
帰り道はおばあちゃんが北くんの昔の話をたくさんしてくれて、大笑いしたのでいいリフレッシュになった。北くんはどこか機械的というか、弱味が見えない人のように思っていたけど、おばあちゃんからはまったく違うように話を聞いて、なんだか胸が温かくなった。ここでだいじょうぶよというおばあちゃんと最寄りの駅で別れると、ひんやりして薄暗い帰り道を歩きながら、さっきまで東京にいたのが嘘みたいだ、とどこか落ち着いている自分がいて、でもまだ残る胸が締め付けられる感覚が、それはほんとうだと何度も教えてくれる。なんかうまいこと、気の利いた事言えればよかったのに。尾白は、そうだ、勉強頑張れって言ったんだ。深呼吸して、家までの道を走りだす。私は机の前に座らないといけないから。