宮ンズのマドンナは女バスのエース
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尾白がめっちゃいいやつでよかった。結果としては双子に感謝しないといけないのかもしれない。悔しいから絶対言わないけれども。明日からも今まで通りと約束して、本当にその通りになった。友達同士で軽口をたたき合って、ゲラゲラ笑って、面倒見のいい尾白にせっせと世話を焼かれて。だけどふとした瞬間に、照れたのを隠すように私の頭をぐしゃっとしてくるのにときめくくらいは許されたい。勘違いじゃないと思いたい。
わたしにこうも自信を持たせたのは北くんに他ならない。普段は体育館以外で話すことはないのに、わざわざ呼び止められた。私の態度が翌日からも変わっていなかったことを逆に部員たちに心配された尾白が、卒業したら付き合うから、とさらっと宣言したらしい。えっ!?なに!?見たかったし!?と混乱していると北くんは大きな目を細めて笑った。
「双子黙らすためかと思てたけど、その反応やったらほんまの牽制やったんやね」
「け、ん、せい、」
そんなことがあったとはまったく気づいていなさそうな尾白は、今までと変わらないように努力してくれている、ところがやっぱり好きだ。最後のインターハイでも去年と同じように夜には2人でコンビニにアイスを食べに行き、去年と違うのは双子が、わたしたちが一緒にいるところを見ると気まずそうにそそくさと逃げていくようになったところで、これはいくらか生活しやすい。
インターハイを最後に引退したわたしたちをよそに、バレー部の3年は当然のように春高まで残るらしい。尾白には大学からもプロからも誘いが来ているらしいとどっかからの噂で聞いた。
「おまえ、もう体育館こんのん?」
「は?引退したんやし当たり前やん。双子にキック入れにいこか?」
「ちゃうわ、たまには見に来るんかとおもてた」
「あほか。勉強頑張ってんねん。今のうちに頑張っといて、春高見に行くからショボい試合すんなよ」
「なにそれ、めっちゃやる気でるやん」
「尾白ってさー、わたしが見に行ったくらいでやる気出るようなやつやったっけ?」
「いやまあお前がおらんでもやる気はあるわ」
「そやろ」
あの時の藤棚の下はわたしたちにとってちょっといいおしゃべりスペースだった。休み時間とか、テスト期間とか。そろそろ紙パックのジュースも全種類制覇できる気がする。
「あんたさー」
「おー」
「プロに誘われてるってまじ?」
「…まじや、ファルコンズに決まると思うわ、地元やし」
「ファルコンズ!?ガチのプロやん!高卒とかって2部とかちゃうん!?」
「なんやねん、ダルビッシュやってまーくんやって高卒やろ」
「まじか…やば…比較対象そこなん!?」
「お前こそどないすねん。どこの大学いくん?」
「本命は県立かな。女子大とかも受けるけど滑り止めやしな」
「…ほんなら、卒業しても近くにおんねんな」
「なにちょっとほっとしとるん?」
「うるさいわ、覚悟しとけ」
向かい合ったベンチに斜めに座って。くっつくのも向かい合うのも何か違う、微妙な距離感がもどかしい。尾白の優しさに甘えて、いる。まだ、そうしていたい。お互いのつま先を見てぽつぽつ喋って、ときどきしっかり目を合わせて、いたい。尾白を支えられるような、尾白にとって必要不可欠なような人間に、わたしはきっとまだなれなくて、それがこわい。そんな弱気も全部吹き飛ばしてくれそうな、尾白が好きで、こわくて、申し訳ない。
わたしにこうも自信を持たせたのは北くんに他ならない。普段は体育館以外で話すことはないのに、わざわざ呼び止められた。私の態度が翌日からも変わっていなかったことを逆に部員たちに心配された尾白が、卒業したら付き合うから、とさらっと宣言したらしい。えっ!?なに!?見たかったし!?と混乱していると北くんは大きな目を細めて笑った。
「双子黙らすためかと思てたけど、その反応やったらほんまの牽制やったんやね」
「け、ん、せい、」
そんなことがあったとはまったく気づいていなさそうな尾白は、今までと変わらないように努力してくれている、ところがやっぱり好きだ。最後のインターハイでも去年と同じように夜には2人でコンビニにアイスを食べに行き、去年と違うのは双子が、わたしたちが一緒にいるところを見ると気まずそうにそそくさと逃げていくようになったところで、これはいくらか生活しやすい。
インターハイを最後に引退したわたしたちをよそに、バレー部の3年は当然のように春高まで残るらしい。尾白には大学からもプロからも誘いが来ているらしいとどっかからの噂で聞いた。
「おまえ、もう体育館こんのん?」
「は?引退したんやし当たり前やん。双子にキック入れにいこか?」
「ちゃうわ、たまには見に来るんかとおもてた」
「あほか。勉強頑張ってんねん。今のうちに頑張っといて、春高見に行くからショボい試合すんなよ」
「なにそれ、めっちゃやる気でるやん」
「尾白ってさー、わたしが見に行ったくらいでやる気出るようなやつやったっけ?」
「いやまあお前がおらんでもやる気はあるわ」
「そやろ」
あの時の藤棚の下はわたしたちにとってちょっといいおしゃべりスペースだった。休み時間とか、テスト期間とか。そろそろ紙パックのジュースも全種類制覇できる気がする。
「あんたさー」
「おー」
「プロに誘われてるってまじ?」
「…まじや、ファルコンズに決まると思うわ、地元やし」
「ファルコンズ!?ガチのプロやん!高卒とかって2部とかちゃうん!?」
「なんやねん、ダルビッシュやってまーくんやって高卒やろ」
「まじか…やば…比較対象そこなん!?」
「お前こそどないすねん。どこの大学いくん?」
「本命は県立かな。女子大とかも受けるけど滑り止めやしな」
「…ほんなら、卒業しても近くにおんねんな」
「なにちょっとほっとしとるん?」
「うるさいわ、覚悟しとけ」
向かい合ったベンチに斜めに座って。くっつくのも向かい合うのも何か違う、微妙な距離感がもどかしい。尾白の優しさに甘えて、いる。まだ、そうしていたい。お互いのつま先を見てぽつぽつ喋って、ときどきしっかり目を合わせて、いたい。尾白を支えられるような、尾白にとって必要不可欠なような人間に、わたしはきっとまだなれなくて、それがこわい。そんな弱気も全部吹き飛ばしてくれそうな、尾白が好きで、こわくて、申し訳ない。