宮ンズのマドンナは女バスのエース
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男バレがえらいやかましくなったと思ったのは
2年の春。
体育館の真ん中にネットのカーテンをかけて半分に分けて使っている女子バスケ部は、バレー部の様子がよく見える。同級生では今年同じクラスになった尾白をはじめ、大耳くんとか、北くんとか、まあなんやスポーツ選手としても人としても静かな圧のあるイメージだったのが、新入生がやってきて一気に雰囲気が変わった、と私には思える。特に目立つのは金髪で声のでかい子、と思っていたら翌日には髪色が変わっている。よくよく見ると金髪の方もおって、なんと彼らは双子らしい。男バレは全国レベルの強豪なので、双子そろって入部とはなかなかすごいと思う。
絵に描いたように毎日小競り合いから大げんかを繰り返す二人をとっちめるのが北くんの役目らしい。金髪の方がアツムでもう一人の方がオサムというらしい。うちの部員の中には双子のことをイケメンだとキャッキャしている子たちがおって、いや好きにしてくれてええねん。否定はせんから。でも私は正直彼らを見てると落ち着かない。あとアツムくんとオサムくんのどっちがええかとか話してるのも聞こえるけど正直顔は同じだし両方たぶんアホっぽいからどっちもどっちやろ、と心の中で突っ込む。
女子バスケ部はまあ県大会でベスト4には入ってる、くらいのチームで、優勝にはなかなかあと一歩届かないことが多かった。ところがどっこい今年は県総体でうっかり優勝してしまい、私たちは全国大会に出場することになった。男子バレー部ももちろん全国行きを決めており、一学期の終業式に男バレと女バスの壮行式が開かれることになった。全国でも指折りの強豪の男バレとちがって、我らはギリギリの出場なので正直出たところでいい結果は期待できないのに、並んで壮行式なんて正直こっぱずかしい。ユニホームで体育館の外の廊下に整列する。隣に並んだ男バレはやっぱり長身でごつくて威圧感がすごい。
中からの合図で全校生徒の拍手とともに入場し、ステージに上がる。恥ずかしいし目の前の人は多いしで逃げ出したい気持ちを抑え、目が泳がないように体育館の後の窓から見える青空を眺める。来月どこどこで開かれるインターハイに、とかいう説明を右から左に流して校歌とか拍手とかに耐えて、なんとかその時を乗り切る。再び大拍手で退場し、体育館を出た瞬間の解放感に大きく伸びをすると、同じクラスの尾白と目が合った。
「緊張しすぎか」
「するやろ普通」
「そうなん?あんなん適当に気を付けしとけばええやん」
「ハァー!全国レベルは言うことがちゃいますな!」
ムキムキの背中をべちっと叩くと、わざとらしく痛ァ!などと声を上げてくるが、尾白はめちゃめちゃ良い奴だと思う。突っ込みが鋭いわりに、驚くほど周りの人間を傷つけないし、腹を立てているところを見たことがない。ユーモアの反射神経が強すぎる。部室に着替えに戻るために、じゃーねと手を振ったところで、反対側から大股でやってきた、えーっとオサムくんとぶつかってしまう。うわ、顔こわ。
「あー、ごめんね」
「っす…」
は?くそこわいじゃん。尾白のソフトさ見習って?爪の垢もらって?なんでモテるの?意味が分からなすぎる!ショックを受けながら部室に戻ると、やばいさっき宮くん隣だったとか、顔がいいとかそんな話で盛り上がっている。いやいやいや。刷り込まれたん?なんか魔術でも使われたんと違う?いやまあ何をもってかっこいいとするかは個人の自由やからな、となんだか目のやり場に困りながら、慌てて着替えて早めに教室に戻った。
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