桐生くんと転校生
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「わかつくん、春高の移動の予定をね、昨日先生と立ててたんだけど」
「おう…おー、飛行機か、緊張するな」
「緊張はないでしょ、まあ向こう着けば私がある程度案内できるから。なんか去年と宿が違うんでしょ?」
「そうそう、去年のとこはとれんやったち、みっちゃん先生が言いよった」
「なあなあ、わかっちゃんと苗字さんすっかり夫婦みたいやなあ」
「ほんと、ずっと一緒におるみたい。こないだこっち来たとか信じられん」
「な…!」
「もー、わかつくんシャイなんだからそういうのやめたげてよ、本気で照れちゃうじゃん」
「ばかやね、それが面白いんちゃ」
「それ!」
わかつくんの隣は居心地がよく
優しい彼は私のことを邪険にすることもなく
今みたいにからかわれても
真っ赤になって慌てるだけで
わかつくんの優しさに甘えて
ついつい一緒にいてしまうのは確か。
光ちゃんとだってこんなに一緒にいたことはなかった。
期末テストが終わっていよいよ春高前
東京出身ということで
先生からは電車やバスのことを色々聞かれた。
電車は止まる可能性もあるし
いくつかのルートやバスでの移動も考えて
当日慌てないで済むようにしておくんだと言われて
これまで東京に住んでた私は
恵まれてたんだなあと思ったりもした。
冬の冷たく乾いた空気の中で
フィジカルトレーニングを欠かさないみんなの
外から戻ってきた、耳や鼻や、体は真っ赤になって痛そうで
マネの手冷たくて気持ちいい~と
二つしかない掌を取り合われるのも
なんだか面白おかしくって。
「あれ、わかつくんあがらないの?」
「ちょっと、サーブ悪かったき、残っていく。先帰っとってええき」
「まっててもいい?」
先に着替えを済ませて
体育館に戻ってくると
貒くんや満くんとすれ違う
「八さんもうちょっとやるみたいやき、俺ら帰ります」
「あんま遅くならんうちに止めてやっち」
「ああ、うん。おつかれさま」
****
エンドラインから必要な距離をとって
助走、トス、踏み切って、
「お、ナイスサーブ」
「苗字」
「球拾いくらいしてあげるから思い切りやって」
「…お前、そういえばサーブは?」
「わたし?ジャンフロだけど」
「…見たい」
「…半年打ってないけど…」
思わず口からこぼれ出た言葉を
苗字は足元のボールと一緒に拾い上げて
肩をぶんぶん乱暴に回す。
低めのトスに掌を合わせて
真っすぐ飛んだボールは白帯に弾かれる。
「あー、やっぱだめか。久しぶりに打ったからな」
硬い制服の上着を雑に投げ捨てて
苗字はちょっと屈伸をする。
「わかつくんの手伝いしようと思ってきたのに。みんなには内緒にしててよ」
「ええよ」
プロの選手ほどではないにしても
女子にしてはまあまあ背が高い方で
ブランクがあるといったものの
フォームは無駄がなく軽やか
苗字が何本か打ったところで
怒鳴り声が響き渡る
「いつまでやりよんやお前ら!!つーか苗字なんで打っちょんや!!」
「ヒイ!すみません」
「いやええ!ちょっと練習したらかなりできそうやとは思うちょった」
慌てて片付けて自転車に飛び乗る
苗字は終始けらけら笑って
冷たい空の下をびゅんびゅん進んだ
「ちょー寒いね」
「スカート短くて、寒そうやな」
「そこは譲れないのよ。タイツはいてるし毛糸のパンツも履いてるから大丈夫」
「けっ!?」
「やっぱでも、顔が冷えるよね、目出し帽とかかぶったらいいのかなあ、そしたら目だけ寒いよね~…」
「目って…寒なるんか?」
耳が冷たい
胸がうるさい
好きだと言ったら
お前は困るか
東京に帰るお前の
重しになるか
手を握ったら
どんな顔をするか
「わかつくん、怖い顔。心配ごと?」
「あっ!!いや!!」
「ははー、毛糸のパンツ想像したでしょう、やらしー」
「なっ!!しとらん!!断じてしちょらん!!」
「わかつくんのエッチ!!」
「あ!おいこら!面白がっとろう!」