桐生くんと転校生
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夕方の呼び鈴に、宅急便かとドアを開けると
隣に引っ越してきました、と
優しそうな夫婦が立っていたので
慌てて挨拶をして夕飯を作っていた母ちゃんに声をかける
引っ込むに引っ込めなくなって立ち尽くしていると
息子さん高校生ですか、と
「狢坂高校の3年です」
「あら、うちの子も狢坂に転入することになってるんですよ、よろしくね。こんなことなら引っ張ってでも連れてくればよかった」
「仕方ないよ母さん、移動疲れでぐっすり寝てたんだから」
「よ、よろしくお願いします」
*****
「東京から来ました、苗字名前です。よろしくお願いします」
翌日、クラスにやってきた小柄な女子。
肩より長い髪を三つ編みにして
伏し目がちに、大きくはないがはっきりした声で
苗字名前、と名乗る。
ああ、やっぱり、昨日来たのは苗字さん
東京からとは驚いたが、
道理で訛りのないきれいな発音。
俺らのまわりは大体みんな
方言ばりばりだからその差にびっくりする
隣の席に座った苗字さんは
さっそく女子に囲まれて
うんとかまあとか困ったように
愛想笑いを浮かべて返事をしている。
予鈴がなって女子たちが自分の席に戻ると
苗字さんは膝の上にタオルハンカチをのせて
ポケットからリップクリームを出して
ゆっくりとくちびるに、塗った。
ふ、と目が合って
あの、と。
「すみません、まだ教科書買ってなくて、見せてもらえませんか」
「おお、かまわん」
「俺、桐生ゆうんやけど、たぶん家、隣じゃ」
「え?」
「昨日おじさんとおばさん挨拶きちゃったき?まあ隣のよしみやき、なんかあったら声かけてくれ」
「…あ、ありがとう」
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