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「名前ちゃん、昨日デートだったの?」
「だから、デートじゃないですって。でっかい犬に懐かれちゃって」
「それにしちゃ今日はぼんやりしてんな」
関東地方は雪に弱い。
そもそも雪が降って当然の
私たちとは備えが違う。
体育館の正面玄関周りの雪を軽くかいて
部屋の中はしっかりと温かく。
朝目覚めると、牛島は当然のように隣にいて
律儀におはようございます、と挨拶をし
身支度を整えて礼を述べて帰っていった。
なんだったんだ、あいつ。
なんなんだ、私たち。
なんなんだ、わたし。
もっと単純に生まれればよかったのに。
これまで培ってきた牛島や
バレー部のみんなとの
思い出や人間関係を思うと
脳の血流が止まる、感じがする。
寒い日は暖かくて甘い飲み物がいちばん
キャラメルラテの粉に湯を注いで
ひざかけを拾い上げる。
あのシューズの音や
鈍い打球音や
しなやかに反った背中や、
たくさんたくさん浮かんで苦しい。
「名前ちゃん、あの男となんかあったのか?」
「だからないって、」
「でも、泣いてるべ」
「え」
「何があったか知らねえけど、今日は帰りな。うまい飯食って、ゆっくり風呂入って、あったかい布団で寝て来い」
こんなとき、頼れる人がいない。
誰に打ち明けるの?
大平、天童、瀬見、白布、
いろんな人の顔が浮かんでは
心の中で、ごめんねと
たくさんつぶやいた。
わたしが女だからいけないんだろうか。
湯船にお湯を張って
泡の出る入浴剤を溶かして
ゆっくり浸かる じんわり温まる
ぼろぼろ涙が出てきて
鼻の奥は入浴剤の、柚の香りでいっぱいになった
***
男子バレーボール日本代表
負傷から復活したエーススパイカー
牛島若利らの活躍によりワールドバレー
19年ぶりの準決勝進出
男子バレーは世界の壁に屈し
日本が開催している大会でも
勝ち進めることはほとんどなかった。
若いアイドルの男の子が試合前に歌を歌って
そのあとは外国同士の試合。
そんなテレビ放送を見ることが多かった。
画面の向こうにいるあいつは
よく知っている、ギラギラした
牛島若利に違いなく見える。
突然私の前に現れるぼけっとした男と
同じ人物とはなんだか思えない。
すきとか、きらいとか、そういう人じゃない気がする
触れるとか触れないとか、
あーでもない、こーでもないとか。
あれからあいつは一度もやってこない。
私も会いに行ったりしない。
刺すような視線、体育館の乾いた足音
一度も会わないその間
ずっと牛島のことを考えていた。
世界の高い壁に、負けずに戦う
確か白鳥沢が宮城代表を逃した時
相手のチームにすごく小さいスパイカーがいたはずだ
牛島、牛島、
「昨日テレビでバレー見たか」
「おお~久しぶりに盛り上がってますよね」
「なかなか日本が勝つところ見れないもんな」
「名前ちゃんの彼氏も頑張ってるねえ」
「…彼氏じゃないです、ただの部活の後輩です」
「でもやっぱ応援してんだろ」
「当たり前ですよ、あたしら世代にとってはあいつはヒーローなんです」
*
「名前ちゃん、昨日デートだったの?」
「だから、デートじゃないですって。でっかい犬に懐かれちゃって」
「それにしちゃ今日はぼんやりしてんな」
関東地方は雪に弱い。
そもそも雪が降って当然の
私たちとは備えが違う。
体育館の正面玄関周りの雪を軽くかいて
部屋の中はしっかりと温かく。
朝目覚めると、牛島は当然のように隣にいて
律儀におはようございます、と挨拶をし
身支度を整えて礼を述べて帰っていった。
なんだったんだ、あいつ。
なんなんだ、私たち。
なんなんだ、わたし。
もっと単純に生まれればよかったのに。
これまで培ってきた牛島や
バレー部のみんなとの
思い出や人間関係を思うと
脳の血流が止まる、感じがする。
寒い日は暖かくて甘い飲み物がいちばん
キャラメルラテの粉に湯を注いで
ひざかけを拾い上げる。
あのシューズの音や
鈍い打球音や
しなやかに反った背中や、
たくさんたくさん浮かんで苦しい。
「名前ちゃん、あの男となんかあったのか?」
「だからないって、」
「でも、泣いてるべ」
「え」
「何があったか知らねえけど、今日は帰りな。うまい飯食って、ゆっくり風呂入って、あったかい布団で寝て来い」
こんなとき、頼れる人がいない。
誰に打ち明けるの?
大平、天童、瀬見、白布、
いろんな人の顔が浮かんでは
心の中で、ごめんねと
たくさんつぶやいた。
わたしが女だからいけないんだろうか。
湯船にお湯を張って
泡の出る入浴剤を溶かして
ゆっくり浸かる じんわり温まる
ぼろぼろ涙が出てきて
鼻の奥は入浴剤の、柚の香りでいっぱいになった
***
男子バレーボール日本代表
負傷から復活したエーススパイカー
牛島若利らの活躍によりワールドバレー
19年ぶりの準決勝進出
男子バレーは世界の壁に屈し
日本が開催している大会でも
勝ち進めることはほとんどなかった。
若いアイドルの男の子が試合前に歌を歌って
そのあとは外国同士の試合。
そんなテレビ放送を見ることが多かった。
画面の向こうにいるあいつは
よく知っている、ギラギラした
牛島若利に違いなく見える。
突然私の前に現れるぼけっとした男と
同じ人物とはなんだか思えない。
すきとか、きらいとか、そういう人じゃない気がする
触れるとか触れないとか、
あーでもない、こーでもないとか。
あれからあいつは一度もやってこない。
私も会いに行ったりしない。
刺すような視線、体育館の乾いた足音
一度も会わないその間
ずっと牛島のことを考えていた。
世界の高い壁に、負けずに戦う
確か白鳥沢が宮城代表を逃した時
相手のチームにすごく小さいスパイカーがいたはずだ
牛島、牛島、
「昨日テレビでバレー見たか」
「おお~久しぶりに盛り上がってますよね」
「なかなか日本が勝つところ見れないもんな」
「名前ちゃんの彼氏も頑張ってるねえ」
「…彼氏じゃないです、ただの部活の後輩です」
「でもやっぱ応援してんだろ」
「当たり前ですよ、あたしら世代にとってはあいつはヒーローなんです」
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