高校生
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「若利は、苗字先輩と仲がいいよな」
「そうか?苗字さんにはとても親切にしてもらっているが…仲がいいとはそういうものか」
「若利は律儀だな」
「苗字さんには、入学前に話しかけられた。」
「そうだったのか。なんか、そうだな…お前のこと手のかかる後輩みたいな目で見てるところが、他の先輩たちと違って面白いよな」
「…俺は、苗字さんの手を煩わせているのか?」
「んー、いや、そういうことじゃないんだ、俺の言い方が悪かった」
中学時代、若利は既に
宮城に牛若あり、
全国3本指のスパイカーだと注目され
相応の結果を残し
スーパールーキーとして高等部に進学してきた。
まあ中学からチームメイトの俺だが
レギュラーだったのは漸く2年生からだから
1年から活躍していた若利は
俺にとってはスーパーヒーローで
付き合うほどに人間味のある
けっこうおもしろいやつだったりする。
若利は基本的にバレーボールにしか興味がない。
テレビを見ないし可愛い女の子にも見向きもしない。
だからおっかない人間だと思われたり
ちょっと敬遠されたりするのも珍しいことではない。
だけどバレー部の一つ上の苗字さんというマネージャーは
たぶん俺と同じような気持ちで若利と接している。
小柄で可愛らしい見た目に反して
物怖じせず監督やコーチにも
自分の意見を伝えられる強心臓で
3年の先輩たちからも一目置かれている存在。
そんな彼女が若利を
新しいおもちゃのようにいじくりまわすのが
もはや部内でも恒例の光景になっている。
「牛島みて!わたし上からサーブ打てるようになった!」
「そうですか。女子バレー部がなくて残念です」
「真面目か!!」
「ねえ大平!牛島ってランニングとかまじ独走して帰ってくるんだけど!チームメイトとしてどうなのあれ」
「え…中等部の時からなので特に何とも思っていませんでしたが」
「まじ!?大平も大概おもしろいよね!!ねえセミセミ、うちのチームワーク大丈夫なの?」
「え、チームワークっすか?」
俺たちの体を慮って
監督にぶつかっていく姿には驚いたけど
明るく大きな声で
あっはっはと笑う声が印象的で
先輩が秘密を持っていることには気づかないままだった。
**
「苗字さん、何をしているんですか」
「おう牛島、見りゃわかるだろボトル洗ってんだ」
「1人で」
「あー、他の2人は風邪っぽかったから帰した」
「そうですか。それなら手伝います」
「え、いいよそれは困る!すぐ終わるから」
「すぐ終わるなら尚更」
「水冷たいしあんたまで風邪引いたらわたし監督にぶっころされるんだけど」
「自分は体は丈夫ですので」
「なんなの牛島ってめっちゃいい子なの…」
「…先輩の仕事を手伝うのは当然のことだと思いますが」
「バッキャロー私はそのためのマネージャーなんです!あ!大平いいところに!こいついい子すぎるんだけどちょっと連れてってくんない?」
「…おおよそ様子はわかりましたから、俺も手伝いますね」
「ブルータスお前もか…」
「大平はブルータスではなく獅音ですが」
「牛島のそういうところ好きよ」
入学当初、先輩が若利をかわいがっているなあと思っていたけれど
若利は本当に裏表のない人間なので
思いやりとか礼儀とか
先輩の方がびっくりしたり
戸惑ったりすることもあるんだと
最近気づき始めた。
同時に苗字さんは、俺にとっては
近所のお姉さんのような
近いのか遠いのかよくわからない
そして、若利のいいところを共有している
かけがえのない存在になっていった。
「うるせえ小娘黙っとけ!!」
「いやですこれが黙ってられますか!もう2時間休憩してない!監督の時代とは違うの!昭和はもうおわったんです!!きつけりゃいいってもんじゃないんです!」
「いちいちうるせえガキだ…おいお前ら!これ終わったら10分休め!」
監督と苗字さんの言い合いももはや名物
お互いにつかみ合いながら譲らない
チームにとって絶対的な監督に
苗字さんだからこそできることだった。
明るく元気で気配りのある苗字さんだから。
誰もがそう思っていた。恐らく先輩たちも。
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