Target1:氷帝学園男子テニス部
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翌日、あたしはインターホンの音で目が覚めた。眠い目を擦りながら玄関へ向かうが心中はあまりよろしくない。誰だ。こんな朝早くから訪ねて来るやつは……。というか、この世界にあたしを訪ねて来るやつなんて、とそこまで考えてドアを開けた。
「……はぁい。」
寝ぼけ眼で開けたドアの先に居たのは、私服姿のお隣さんでした。思わず無言のままぱちくりと瞬きを繰り返す。昨日のアレで嫌われたのではなかったのか。
「……その格好は流石にあかんと思うで。」
言われて視線を自分の身体へと移すと、目に入るのはパーカーにショート丈のパンツの、至って普通のルームウェアだった。もこもこした生地のそれは、寧ろ女子力が高いと言われてもいいと思うのだけど。
視線だけで何が悪いの、と忍足に問うと呆れたように溜息をつかれた。今更ながら皆よく溜息をつくなぁと他人事のように思っていると忍足が口を開く。
「着替えたらうちに来てくれへん?ちょっと話があんねん。……跡部が。」
「……は?」
だからなんで。彼らに会ったのは昨日が初めてで。更に言うと、彼らからしたらあたしは完全な不審者だった筈なのに。それでもまぁ、彼らに関われるのなら行ってみようじゃないか、と肯定の意を唱えると、忍足は一足先に自宅へと帰って行った。
出来るだけ早く
「で、話って何?」
忍足が用意してくれたお茶で口内を潤し口を開く。敬語ではなくなったことを跡部は気にしていないようだった。
「樺地。」
跡部の呼び掛けに樺地はいつものウスで答えて、あたしに段ボールを一箱差し出してきた。
「何?」
首を傾げるあたしに跡部が無言で開けろと示すものだから、それに従って段ボールを開封する。中身は昨日間近で見た、氷帝学園の制服だった。間近で見た物と違い、スカートだったけれど。果たして、跡部はコレをあたしに与えて何がしたいのだろう。跡部の考えることが分からない。
尚も首を傾げるあたしに、跡部が視線を合わせて言い放った。
「俺たちのマネージャーをやれ。」
「……は?」
何処の誰かから……というか、確実に忍足からしかあり得ないのだけど、あたしの事情を聞いたらしい跡部はあたしを氷帝学園に転入させたいらしい。親がおらず、恐らく戸籍などの問題もあるであろうあたしにとっては"跡部"という後ろ盾を持って通学できるのはとても有り難いのだけど。それでも、あたしが氷帝に転入することで得られるメリットが跡部には無いような気がして。
「……嬉しくねぇのか。あーん?」
「嬉しく、無いわけじゃ、ないけど。」
その言葉は本心だった。あたしはあり得ない"もしも"に賭けてしまう程度には、彼らが好きだったのだから。
実際に会えただけでなく、マネージャーに誘ってもらえるなんて嬉しくないわけがない。ただ。
「……信じてるのかは知らないけど、あたしはいつ帰るか分からないし、無責任な事はしたくない。」
「それやったら、昨日のは随分無責任なんちゃうん?」
あたしの"言い訳"に返したのは忍足だった。それに少し驚愕する。忍足のその言葉は、少なからずあたしが一方的にした宣言を期待しているように思えて。
「そうだね、ごめん。」
その言葉に忍足は少しだけ悲しそうに眉尻を下げる。そのままあたしは言葉を続けた。
「忍足とした約束を撤回するつもりはない。……だから。だから跡部達さえ良ければ、あたしにマネージャーをやらせてください。」
いつ帰るかは分からないけれど、それまででいいならとあたしは強い決意を持って頭を下げた。