Target7:四天宝寺中男子テニス部
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あぁ、心地よいなと普段耳にする事のない波音を片隅に、少し離れたロッジへ足を運ぶ。時折頬を撫でるのは、湿気を多分に含んではいるが、普段の生活区域よりかは気温が低い風だった。特段不快になるものでもなく、爽やかと評せるものでもない。けれどそんな風を好む人もいるだろう。あたしもその一人だった。
どっちつかずなその風が、まるであたしみたいだなと感じた思考を端に寄せ、目に付いた背中に声をかけると、猜疑心を隠そうともしない視線でもってその背中の持ち主は振り返る。彼の眼鏡が一瞬だけキラリと反射した。
「氷帝のマネージャーが、我々に何の用ですか。」
木手の側に佇む甲斐と平古場を含めた三人が此方を警戒するように睨みつける。自分よりも体格の良い男にそういった態度を取られるのは随分と久しぶりで、じり、と無意識に数ミリ後退した右足を必死で押し込めた。
しまった、と思った時には遅い。彼等が警戒しているのはあたしを通り越して、その背後にいる跡部だ。あたしが勝手に説得に来たと言っても信じてもらえるかは怪しい。せめてユニフォームくらいは着替えて来るべきだったかもしれない。
それでもここで逃げ帰ってしまうと、跡部の株を下げるだけになってしまう。それだけでも挽回しようと零した言葉は震えていた。
「単刀直入に言う。こんな状況だし、協力しない?」
「そんな事言いにきたのか?」
「……跡部くんの差し金ですか?」
きょとん、と目を少しばかり見開く甲斐と、一層目を細める木手。夏なのに指先の体温が失われて行く。
目の前にいる男達は、全員武術の心得がある。あたしなんて一捻りで追い払えるだろう。尊大な度胸なんて持ち合わせていないのだから、その圧倒的な力の差を見せつけられてしまえば一目散に逃げ出す自信があった。それでも木手から目を逸らす事はしない。力でも、恐らく言葉でも勝てない彼等に訴える術は、そう簡単に引く気は無いと視線で訴えかける事だけだ。
「違う。あたしが個人的にしてるの。」
「アハハ、健気
「確かにこの島は沖縄に近い環境かもしれないけど、ここは沖縄じゃない。キミ達の知らない危険があるかもしれないでしょ。だから情報を共有し合っても、デメリットは少ないと思う。」
辻本彩夏が彼等の説得に使っていた言葉を思い出しながら口にする。要所要所で言葉を詰まらせ、うろ覚えの言葉を補完した。
「どんな危険が
平古場の問いかけに、直ぐには返せなかった。辻本彩夏が何て答えたのか覚えていなかったから。記憶を辿る度に、あぁ、違う、と頭の中で否定をし、更に混乱の渦に呑まれていく。それでも目の前の男達の視線が緩む事はなく、あたしが何と言うのか、どんな反応をするのか見極めているようだ。一つでも選択を間違えれば彼等に近づく事は許されなくなるだろう。そうなれば、彼等の事は跡部に丸投げするしかなくなる。本来はそれが正しいのだけど、あたしはお飾りのマネージャーにだけはなりたくなかった。だから。
「……ごめん、取り消す。あたしが跡部に役立たずだと思われたくないから、あたしの為に協力して欲しい。お願いします。」