Target1:氷帝学園男子テニス部
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「忍足にとって、あたしがそういう存在になるよ。……胸を張って親友ですって言えるような。」
先程までソファに座っていた少女の言葉を思い出す。反射的に返した言葉は"無理やろ"の一言やった。……それは聞こえてへんかったみたいやけど。
今日一日、部活が始まる前に出会って道案内して別れるまでの彼女との会話はよう分からんことばかりやった。異世界の住人やとか、親友になるとか。初対面のくせして、俺のことなら何でも知ってますみたいな態度には正直腹が立つ部分もある。
何が分かんねん。
転校が多かった俺は、早々に友達を作ることを諦めた。波風立てる事なく、ただただ、万人受けするように生活して広く浅くの関係を作り続けた。勿論、氷帝でもそうするつもりで。
それは、まぁ、跡部とかいう色々規格外の男が登場したせいで無駄な努力に終わったんやけど。
「……ほんま、頭痛いわ。」
自分の心の奥底の寂しさを見抜かれてしまったようで。
跡部や岳人が信用出来んとか、そんなんは思ってへん。間違いなくアイツらと全国大会優勝したいと思っとる。ただ、また親の転勤が決まったら俺はついて行くしかない。力の及ばんところはどうしようもない。せやから、アイツらと絆を築こうとは思ってへんかった。
それをあの、異世界から来たとか言う少女は覆そうとする。あぁ、鬱陶しいなぁ。
せやけど、せやけど。何処か喜色じみた感情があるのも一つの事実で。
「……あぁ、一応跡部には知らせとこうか。」
あの少女を気にしとったみたいやから。
先程まで少女が……汐原さんが座っていたソファに身体を投げ出すように寝転ぶ。少し時間が経ったからやろうか、もう温もりは残ってへんかった。
ポケットからスマホを取り出し、跡部へ送るメッセージを打つ。あぁ、何を伝えればええんやろか。
異世界……そうは言っとったものの、信じられるか、と言われれば信じられへんやろ。そんなん。それでも。信じてみたいと思ってしまうんは。
あの子の言うた"親友"になりたいと言う言葉が、殊の外嬉しかったやろうか。
「……もうええわ。全部送ったろ。」
最初から、最後まで。異世界人の件から親友の件まで、全部。ただ一つ、何故か俺らの事を知っとる事だけは"異世界から来たかららしい"と適当な言葉を付け足して。
そうして、考えることを放棄して、全部跡部に任せてしまおう。それでええやろ。
多分跡部は汐原さんを悪いようにはせぇへんから。
メッセージを送ってすぐ、跡部から返信が来る。"明日行く"と何ともシンプルな返事に、らしいなぁと他人事のように思う。
スリープモードになったスマホ画面には、少しだけ頬が緩んだ自分の顔が映っとった。