Target7:四天宝寺中男子テニス部
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ざり、ざり、と枯れ葉や小枝の混じった道を踏みしめ、合宿所を目指す。前方で柳や乾が何やら小難しい話をしているな、と思っていると宍戸も同じ事を思ったようで頭が痛くなる、と帽子越しに手を当てていた。
「……ひっ!」
「相変わらずだね……はい。」
隣を歩く里が短く悲鳴を上げて飛び退く。可愛らしく虫が苦手な里に代わって、適当な小枝を拾いちょいちょいと目の前の小さな蜘蛛の巣を払うと、僅かに涙の膜の張る瞳で此方を睨みつけられた。あたしの隣ではなくて大石の隣に行けばいいのに、と思うが、あたしにだからこんな態度を取るのであって、大石が近くにいると悲鳴すら噛み殺してしまうのだろう。それならあたしの側に居る方が、こうして素直に助けを求められる。それすらも以前では考えられない事だけど。
「そろそろ合宿所が見えてきてもいいころだと思うけど……。」
「……あれじゃないっスか?」
「おっ!そうだ、そうだ。間違いねぇぜ!」
最初に手にした小枝をそのまま持って進んでいると、不意に神尾や桃城といったメンバーが走り出し、海堂が溜息を吐いた。会話を聞く限り、合宿所に到着したらしい。拓けた場所に出る前に小枝を捨てて、あたしは跡部に駆け寄った。此処まで来たら、多分虫も減るだろう。里を一人にしても問題は無い。
あたしは少し迷っていた。
跡部達の目論見を知っていると伝えるか、否か。
海側と山側に別れる際、里が山側あたしが海側を選ぶのが一番自然だ。青学は全員山側なのだし、氷帝の部長である跡部が海側を選ぶのだから。古庄寺くんをどう振り分けるかは分からないが、それは置いておくとして。
あたしがマネージャーのリーダーになれば、跡部もやり易い筈。リーダーに立候補する事自体は、マネージャー内であたしが唯一の三年生なのだから不自然ではない。けれどそもそもの話、たった三人しかいないマネージャーにリーダーが必要なのか、という問題があるのだ。正直な話、あたしもこれが普通のサバイバル合宿だったら必要無いと考えていただろう。けれどこの合宿には大きな秘密があって、それを隠さなければならない。
跡部達がマネージャーにどれだけ仕事の指示を出すかは分からないが、小日向つぐみや辻本彩夏の行動はかなり自由度が高かった。彼女達は巻き込まれただけの、言わばお客様といった立場だったのもあるだろうが、あたし達三人がもしも同じ立場にあったとしたら。そして、里や古庄寺くんがその自由度の高さを生かして、この合宿の秘密を探ってしまったら。
最終的にはバレてしまうのだとしても、出来るだけ期間を引き延ばすのが跡部達の役割。だったら、マネージャーも誰かが統率していた方がいい。そう跡部に提案するには、あたしがどうして合宿の目的を知っているのかを説明しなければならない。あたしが隠している事を、打ち明けなければならない。
「ねぇ。」
あーでもない、こーでもないと考え込んでいるあたしに声を掛けて来たのはリョーマだった。
「合宿所内の探索するみたいっすけど。サボってていーの。」
どうやら跡部の話が終わってもぼーっと立ち尽くしたままのあたしを気に掛けてくれたらしい。ハッと周囲を見渡すと既に大半の人が探索に励んでいた。
「ありがとう。折角だし、リョーマに付いて行っていい?」
「別にいいっすけど……ねぇ、何か聞こえない?」
探索範囲等の細かい指示を聞き逃していたから、どうにか一人での捜索を避けようと声を掛けてくれたリョーマに同行する約束を取り付ける。リョーマの言葉に耳をすませば、確かに微かだが、何か話し声のような音が聞こえる。
「何だろう……話し声?」
「多分。行ってみよう。」
ロッジへ向かうリョーマに着いて行く。正面から裏に回ると黄色と緑のコントラストが目に付くユニフォームの面々。飛び交うその言葉は関西訛りが主で、中に一つだけ聞き覚えのある声が混じっていた。