Target7:四天宝寺中男子テニス部
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元井が部活どころか学校に来なくなってから二週間程。
彼女はどうやら転校初日に窓際の日吉の席を無理矢理奪い取っていたらしい。日吉がやたらと彼女を嫌っていたのはそういう事なんだろう。別に席を取られた事が嫌だったのではなくて、あまりにも常識に欠けるその態度から関わりたくない人種だと判断していたのにテニス部にまで入部されてしまって逃げ場を失っていたようだ。あたしも元井の事は嫌いだから、日吉の気持ちはよく分かる。ストレスが半端なかっただろうな、と現実逃避をしたところで目の前の景色が変わる訳がない。目を擦ったところで悠々と広がる海は消えなかった。
全国大会前、サバイバル合宿。そして作中に出ていた学校がほぼ全校参加、とくれば思い当たるのは一つしかない。ドキドキサバイバル。
事前の情報としてサバイバル合宿である事と参加校は聞いていたが、如何せん、参加選手に財前光、一氏ユウジ、そして滝萩ノ介がいた事に加えて、参加マネージャーとして水羽里、汐原琹、そして古庄寺静希の三人が追加されていた。更には、本来のヒロインとなる筈である小日向つぐみと辻本彩夏なる人物も居ないのだ。それでどうして気づけようか。
あたしが気付いた時には、既に先生達と離れ、無人島に流れ着いた後だった。
「琹、怪我はねぇな?」
「うん、大丈夫。氷帝のメンバーの確認してくるね。」
あぁ、と跡部の言葉を待たずして取り敢えず近場で視線を回して誰が居るかを確認する。がっくんが忍足の側に居て、ちょたが宍戸の側に居るから、あたしが探さなければいけないのはジローちゃんと日吉、滝か。樺地はさっき跡部の側に居たから、怪我の有無も既に報告が行っているだろう。
一番近くに居た忍足達に声をかけて怪我の有無と序でにジローちゃん達の居場所を問うと、逆にあたしの怪我の有無を確認される。かなりパニックになっていた所為で船の座礁が始まった時までしか確かな記憶は無いが、身体が投げ出されたような感覚は無かった、筈だ。今現在痛みを感じる事も無いからと、怪我がない旨を返すと二人同時に胸を撫で下ろした。日吉と滝は少し離れた場所に居ると教えて貰い、先に宍戸達の元へ行くと忍足達と同じような会話をする。日吉達も同様だった。つまり、誰もジローちゃんの居場所を知らない。
一先ずは誰も怪我をしていない事を喜び、それからジローちゃんを探す為に、拓けた浜辺から少しだけ離れた雑木林へと身体を滑り込ませた。
海から打ち上げられたのだから、こんな所にいる訳はないと思う。実際、参加者の大半は浜辺に集合していて、今頃跡部が点呼を取っているだろう。けれどジローちゃんなら目が覚めた後に、木陰を探して移動していても可笑しくはない。程なくして木陰で寝転んでいるジローちゃんを見つけてホッと胸を撫で下ろした。
「ジローちゃん、起きて。」
そうして声をかけると、いつものように寝惚け眼であたしをその腕の中に引き摺り込もうとする。両腕を伸ばし、あたしを求めるように差し出すそれにいつもなら無抵抗で捕まえられるのだけれど、今のこの状況ではそうも言ってられない。呑気に昼寝なんかしている場合ではないだろう。
「ジローちゃん、昼寝はまた後で。膝貸してあげるから今は起きて。」
「A〜……。」
「跡部に報告に行かないとあたしが怒られちゃう。」
実際には、ジローちゃんに足止めされていたところで跡部は怒らないだろう。あたしにも、ジローちゃんにも、だ。本人が自覚しているのかは分からないが、彼はあたし達に大層甘い。それに二人して付け入っているのだから、呆れた物だ。ジローちゃんもそれを自覚しているものだから、慌てて身体を起こす事はしない。寧ろ横にたえたままだ。
「琹ちゃんがチューしてくれたら起きるCー!」
そう言うその声は完全に覚醒しているのだけど。あたしは少しだけ眉を下げながら、地面に膝を付きジローちゃんの頬に唇を寄せた。