Target7:四天宝寺中男子テニス部
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「もしもし?」
謙也が黙った事で一瞬だけ静まる空気に、
「あー……と、侑士なら今お風呂入ってるから、もう少し待っててくれる?」
「ちょ、まっ、は?え?」
未だに混乱の渦中にいる謙也を他所に、洗い物を続け、最後の食器を食器乾燥機に入れて蓋を閉めてスイッチを入れる。仕上げにタオルで手を拭いてから、その手にスマホを収めた。
「初めまして。汐原です。宜しく。」
「お、忍足謙也です。よろしゅう……?」
戸惑いつつも自己紹介をする謙也に、忍足と同じ不安を抱えて苦笑を漏らす。身元のはっきりしない女に軽率に個人情報漏らして良いのか。忍足といい謙也といい、警戒心が無さすぎる。と偉そうな事を思っても、忍足の場合はあたしも多分同じ事をするだろうなと考えると何とも言えなかった。
「うん、宜しく。で、さっきも言ったけど侑士はお風呂入ってるんだよね。後でかけ直す?忍足さえ良ければ侑士が上がってくるまで付き合うけど。」
「あー……それやったら付き合うてや。」
オッケーと軽く了承して、リビングのソファに身体を沈める。耳に当てたスマホの音量を最初と同じくらいまで戻した。
「そうだなー……。」
話題を選ぶ振りをしても、互いの事をよく知らないのだから選べる話題は一つしかない。忍足の事。謙也はあたしが忍足と同じく氷帝生である事を確認してから、普段の学校での忍足の様子を聞いてくる。あたしが素直に部活中や昼食を一緒する際の忍足の様子を話すと、嘘やん、と謙也が驚愕の声を漏らして、本当の侑士を教えたる!と妙に張り切って話し始めた。
その内容は、幼い頃の忍足の事だったり、大阪に帰ってきた忍足に会った時の事だったりとあたしの知っている大人っぽい落ち着いた忍足の話ばかりではなくて、少しやんちゃだったり粗相していたりと子供らしい話もあって、今度はあたしが嘘だ、と声を上げる。あたしの知らない忍足の話。謙也の知らない、あたしだけの忍足の話。それは思い外盛り上がり、二人して楽し気に笑い声を上げた。
「んで、そん時侑士がなー……!」
「うんうん、それで?」
もっともっとと催促をするあたしの頬は、既に笑い過ぎで少々筋肉が張っている。それでも続きを、と思ってしまうのは、謙也の話し方が上手いからだろうか。関西人の性なのか、謙也の持ち合わせる性分なのかは知らないが、落ちがしっかりついていて、話が一段落する度に笑い声を漏らしてしまう。同時に、あたしの知らない忍足を知る事が出来た喜びと、ほんのちょっとの悔しさとが胸に滲み、それを目元に溜まる涙と共に拭い取った。