Target1:氷帝学園男子テニス部
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インターホンを鳴らすと、どちらさん?と出てくる忍足の言葉を遮る。
「忍足さん、ごめんなさい。スーパーまでの道を教えて下さい。」
「……は?」
いきなり頭を下げるあたしに困惑状態の忍足。まぁ、そうだろうな。つい先程目的地まで道案内をした相手が
事実、忍足の口からは大きな溜息が溢れた。
「……自分で調べられへんの?」
ご尤もである。
しかしながらあたしのスマホは今、ロック画面の表示の他は全く操作が出来ないのだ。
申し訳なさから小さくなる声で大まかな説明すると、とりあえず家に上げてくれた。なんと優しい。そんな彼の優しさに付け込む自分が嫌になる。
それでも今、この世界で頼れるのは忍足しかいないのだ。
あたしは心の中で謝って、忍足の背を追いかけるようにリビングへと足を運ぶ。促されるままに座り心地の良さそうなソファに腰を下ろした。実際、とてもふかふかで気持ちがいい。
「地図書いたるから、少し待っとってや。」
そう言いながら麦茶の入ったグラスをあたしの目の前に置いてくれた。
「ご迷惑をおかけします。……ありがとう。」
あたしの言葉に忍足は冷めたような目をする。それはほんの一瞬だけだったけれど。
「別に、迷惑やなんて思ってへんよ。」
"嘘でしょ"とその言葉を忍足に出された麦茶で流し込む。代わりの言葉は思いつかなかった。思いつかなかったから。
「あのね、忍足。」
唐突に敬語をやめたあたしを忍足はリアクションも無く、まっさらな紙に地図を書き続ける。それを了承と受け取って、そのまま言葉を続けた。
「あたしには大事な親友が居るんだよね、アイツと二人なら何でも出来るって思えるようなさ。……忍足は?……忍足にはそんな人居る?」
最後の問いに忍足はペンを止めた。視線を上げ、あたしに焦点を合わせる。
「……どうやろなぁ、秘密にしとくわ。」
顔を上げた瞬間に浮かべた怪訝な表情を一瞬で隠す辺り流石のポーカーフェイスだなと思うのと同時に、特定の人物を即答出来ない忍足に寂しさを覚えてしまった。だからつい。同情とかそんな言葉を考えるより先に無責任な言葉を投げつけた。
「忍足にとって、あたしがそういう存在になるよ。……胸を張って親友ですって言えるような。」
青臭いなぁとか、無責任だなぁとか。思うところは色々あったし、なんなら押し付けがましいにも程があるとも思った。それでも、今言っておかないと後悔するような気がした。
「……。」
「ん?」
ぼそりと何やら呟いたらしい忍足の言葉を聞き返すと、誤魔化すように手書きの地図を手渡される。あたしは本日何度目か分からないお礼を口にしてソファから立ち上がった。
忍足が話さないと言うことは、聞かれたくない言葉だったのだろう。仕方ない。
「ほな、気ぃつけて行きや。」
玄関先で見送ってくれた忍足は、ただただ優しいだけだった。