Target2:転生少女
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ちゃぷん、と軽く音を立てて足先が沈む。そこを中心に広がる波紋は、ふわりと広がって消えていった。
少し熱いと感じる程度の温度。冷えた身体に心地良い。少しずつ身体を沈め肩まで湯船に浸かると、未だシャワーで身体を流していた里が口を開いた。
「……ごめんなさい。」
謝罪。この一言を聞くために、あたし達は随分とすれ違った気がする。あたしはまだ里を羨ましいと思う。きっと里も変わらない。けれど、それでも以前とは少しだけ違う気がした。
「あたしも、ごめん。ずっと、里が羨ましかっただけなんだ。」
「……そう。」
多分、完全に仲直り出来た訳ではないんだろう。しこりもきっと残っている。それでも確かにあたし達の関係は一歩前進した。
ずっとずっと、あたしのずっと先を行く里を超えたかった。何でもいい、一つでいい、琹ちゃん凄いね、と言われたかった。でも、もういい。もう、いい。
とろりと里の滑らかな肩をシャワーから噴き出るお湯が流れる。里がシャワーを止めると、残ったお湯が玉を作って落ちていった。里があたしの横に足先からゆっくりとした動作で身体を沈めていく。肩まで浸かってほぅと息を吐く様は、あたしとよく似ていた。
「ねぇ、琹はどうしてここに居るの。」
「あぁ、昌山と……友達と学校の七不思議を検証してたらここに居たんだよね。」
は、と声を上げてぱちくりこちらに視線を合わせて瞬きをする仕草から、あぁ、絶対信じてないなと眉をハの字に下げる。実際に氷帝でも信じてないだろうなということが感じとれる態度の部員は何人か居た。
里もそうなのだろう。けれど、これ以上説明のしようがないのだから仕方ない。あたしは話を逸らすように口を開いた。
「里はどうしてここに居るの?名字も違うし、あたしより年下になってるし。」
どうなっているの、と。問いかけられた彼女は、合わせていた視線を逸らして言葉を探しているように口を開いては閉じるを繰り返す。
別に、気になるだけで言いたくないならそれでいいよと口にする前に里が言葉を発する。一言だけ、死んだから、と。
「……え?」
「一度死んで、記憶を持ったまま生まれ変わったの。ここに。」
「……そっか。」
沈んでしまった空気を持ち直すのに、どうしていいのか思考を働かせる。前までのギスギスした空気よりも全然心地良いものだったけれど、今更どんな話をしていいのかなんて分からない。でも今は、どんなことでもいいから話していたかった。今までの分を取り返すように。少しでも里のことを知りたかった。
話題を探して合宿中の里の事を思い出す。昼に叩かれた頬はもう痛くはない。
痛くはないけど、思わずふふと笑い声が漏れた。