Target2:転生少女
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「……お風呂行こう!!」
声を上げたあたしに三人の視線が集まる。いいねといった表情ではなく、素っ頓狂な提案に対する呆れ顔だった。けれど反対の意を唱える人も居ない。ならば、と強引に里の手を引いた。
自分で仁王を連れてきておいてなんだけど、里とは二人で話さないといけない気がした。
「大石も仁王も、風邪引くよ。」
里を探してずぶ濡れになった大石は勿論、あたしを抱きしめた時に水分が移ってしまった仁王もお風呂で身体を温めた方がいいだろう。幸い今日の練習は終わっていて、夕飯までは自由時間だ。きっと男子風呂は、同じく雨に降られた自主練習をしていた部員で埋まっているのだろうけど、女子風呂を利用するのはあたしと里と桜乃ちゃんと竜崎先生の四人だけだから、いつでも広々と使う事ができた。
仁王と歩いてきた道を、そのまま里の手を引いて早足で進む。後ろから大石と仁王も付いてきているようだった。
時折男子二人の会話が聞こえる以外には、行きと同様あたし達の足音と雨音しか聞こえない。あたしは振り返って里を確認することはできなかったし、里もあたしの手を振り払う事はしなかった。
里の手は、冷たい。そしてあたしの手も冷たい。雨に奪われた体温を二人で分け合うには少し低すぎたみたいだった。
先程仁王に抱きしめられた時は暖かかったのに。
「汐原。」
「何?」
女子部屋の前に着いて、ここで別れようという頃仁王があたしに声をかける。それに返した言葉は、少しだけ息が弾んでいた。早歩きで歩きすぎたようだ。
「夕飯、一緒に食わんか?」
結局仁王の目的は夕飯のお誘いだったらしい。別に誰とも約束した覚えは無いからここで受けても良いのだけど、それをするには繋がれたら手に込められた力が強くて躊躇する。自分を独りぼっちだと言う里の前でこの誘いを受けるのは、見せつけているようで。
けれど断ってしまうのも同情のように見えてしまって里を刺激することになる。どうしよう、とうろうろと視線を彷徨わせてしまうのも許してほしい。誰も傷つけない選択肢なんてあたしには思いつかない。口を開いて、唇を結んでを繰り返して言葉を探す。けれど自分の意思が決まっていないのだから、適切な言葉なんて見つからない。
「……いいですよ。お風呂から上がったら琹を食堂に行かせますね。」
迷って何も発しないあたしに代わって声を上げたのは、里だった。