Target2:転生少女
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仁王と他愛もない話をしながら奥へと廊下を進む。女子部屋辺りまではすれ違う人もそれなりに居たし、なんなら自主練習上がりの日吉に風邪を引く前に風呂に入るように言われたりもした。届け物をするのは何とか説得の末許して貰えたが、流石にそれを無視するのは彼に悪いだろう。大石達にタオルを届けたら大人しく大浴場に向かうつもりだ。
奥へ奥へと進む。オリエンテーションで説明された施設は、あくまでもトレーニングや日常生活に必要な場所だけでこの建物が保有する施設全てでは無かったから、この奥に何があるのかあたしは知らない。けれど大石から指定された場所は確かにこの奥だった。
節電の為だろうか、必要最低限の光源しかない廊下は少し薄暗い。薄暗い廊下に反響するのは、どしゃ降りであろう雨の音。少しだけ不安が過ぎるのは、別に廊下が薄暗いからではない。いつものこと。
知らない道を行くときは人通りが少ないと、間違っているんじゃないかとか、犯罪に巻き込まれるんじゃないかとか無駄に豊かな想像力を働かせてばくばくと心臓を多用していた。今現在は、一人でないことがあたしの理性を保っている。
「汐原さん……!」
少しして角を曲がると大石と里の姿が目に入る。人知れずほっと胸を撫で下ろした。良かった、道は合っていたらしい。
二人に近寄ると、あたしに負けず劣らず濡れ鼠になっている事に気がつく。慌ててタオルを差し出した。ありがとうと受け取る大石と無言で受け取る里。あたしを待つよりもそのまま大浴場に直行した方が早かったのでは、と口にする前に仁王が預けていた来客用のスリッパを里の目の前に突きつける。そのまま腰を屈めて、前屈するような姿勢で里の足元にスリッパを置いた。それを目で追って、気づく。
(そうか、足元が汚れてるから動けなかったのか。)
里の背後を見やると、ガラス戸の奥に小道とちょっとしたスペースが目に入る。あぁ、確かにここにスリッパで出れば汚れるよなぁと一人で納得した。
大石はこのスペースを見つけた時に一度玄関に靴を取りに行ったのだろう。彼の足元はそれ程汚れておらず、右手の指先に靴を引っ掛けていた。大石がスリッパとタオルを取りに行けば良かったのにとも思ったが、大石が玄関まで行って往復するよりは、恐らく館内に戻っているあたしに頼む方が早いだろう。大石の行動は理に適っていた。そうでなければ、彼は軽率に人を使うなんてことはしなさそうだ。
里はガラス戸の持ち手に手を掛けてバランスを保ち、片足ずつ靴下を脱いでタオルで水気を拭き取っている。時折バランスを崩す里の身体に気がついていながらも手を貸すことはしなかった。