Target2:転生少女
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独占欲に色があるのかは分からないけれど、最近のがっくんやジローちゃんと同じ目をしている。どろりと濁ったようでいてギラギラと輝くような、この時点で矛盾が生じている表現をしながらあたしはこの目が嫌いではなかった。
自分を望んでもらえるのは悪い気はしない。
「里を探してるんだよ。見つかったみたいだから……行かないと。」
あたしの言葉を聞いて尚、仁王は表情を変えない。掴まれている腕の力も変わらない。
それはあたしを引き止めておく為というよりは、どうして良いのか迷っているようにも思えた。仁王は何をどこまで知っているのだろう。
それを問おうと口を開くと同時に、ポケットに入れたままのスマホがメッセージの着信を報せる。仁王は通知音に我に返ったように瞬きをして、あたしの腕を解放してくれた。
「……すまん。」
「どうして謝るの?」
「プリッ。」
謝る必要なんてない。そもそも謝っている理由が分からないのだからこちらもリアクションのしようがないのだ。けれど仁王もこれ以上は深く追求させてくれるつもりはないようだ。
許すとか、許さないとか、そんなことは求めてないのだろう。仁王の瞳には、もう独占欲は浮かんでいなかった。
とりあえずポケットからスマホを取り出して確認する。大石からだった。
タオルとスリッパを一組借りてきて欲しいというメッセージに了承の旨を返して仁王に背を向ける。そのまま二歩ほど進んで、振り返った。
「一緒に、来る?」
仁王の目が僅かに見開かれる。一瞬にしてニヒルな笑みを浮かべた口角に、流石だなという感想以上の気持ちは抱かなかった。仁王は先程あたしがしたように数歩進んで、あたしを追い越した所でゆったりと振り返る。
「なんじゃ、行かんのか?」
成る程、彼の答えは肯定だったようだ。行く、と返す前に一度先程入って来たばかりの玄関に戻り来客用のスリッパを手にする。あとは女子部屋に寄ってタオルを持って行かなければ。
パタパタとスリッパの音を立てながら仁王を追い越す。振り返って行かないの、と彼を真似て口にする前に仁王が隣に並んだ。悔しい。仁王の勝ち誇ったような笑みに、こちらは心内で頬を膨らませて無言を決め込む。
「……昌山みたいじゃな。」
仁王はそんなあたしの態度に何か思うところがあったらしい。昌山みたいってなんだ。褒められてるのか、貶されているのか。
「ねぇ、仁王は何をどこまで知ってるの。……どうして、知っているの。」
昨日から思っていたが、仁王の口振りはまるで。……まるで、昌山がこの世界に居ると言っているようで。
だけど、昌山があたしと同じ事を願う確率ほぼゼロに近い。アイツはテニスの王子様に詳しくないし、あたしがこの世界の登場人物に会いたいなんて非現実的な願いを抱いていた事も知らない、筈。本人が口にしたことのない願いを知る術はどう考えても無かった。だから昌山があたしと同じ境遇であるとは思えない。でも、と思ってしまうのは昌山が何を願ったのか、その答えを知らないからだろう。ゼロに近い"もしも"に賭けてしまう。
「さぁ……?当ててみんしゃい。」
仁王のその曖昧な回答に無意識に口角が上がった。希望的観測に縋れるのならその方がいい。