Target2:転生少女
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「……っ、汐原さん、里ちゃんを見なかったかい?」
「え?見てないけど……部屋に居ない?」
本日の練習スケジュールをこなし、自主練の為にコートに残る部員を置いて宿泊施設へと戻る。そんなあたしの背中に声をかけてきたのは大石だった。少し息が弾んでいる。
「それがどこにも見当たらなくて。」
じわりと額に汗を滲ませ特徴的な前髪を貼り付けている所を見ると、決して短くない時間里を探していたのだろう。きっと弾んでいる息もそのためだ。その事に胸が跳ねる。嬉しかった。里は決して見捨てられていた訳ではないのだ、と。
大石に何処を探したのか問いかけると、あたし達マネージャーに与えられた女子部屋と食堂、待合室等の共有スペース、簡潔に言うと館内で里が行ける場所は全て探したという事だった。館内には居ない、けれどコートには居るはずもない。先程まであたしはコートに居たのだから、流石に里の姿が有れば気がつくだろう。ならば、里は何処に。そう考えるよりも先に身体は動いていた。
「あたしは外探すから、大石は館内をもう一度お願い。これあたしの連絡先だから、見つかったら連絡して。」
「あぁ!」
館内に居ないのだとすると、可能性としてあるのは外しかない。でも。外はどんよりと曇っている。 雨が降るかもしれない。それだけで里を探す口実には十分だった。
大石と別れてコートへ駆ける。ちらほらと見える姿の多くは、やはり各校レギュラー陣のものだ。時たまレギュラー以外の姿も見えるし、反対にレギュラーでも姿が見えない人も居る。様々な人がコートに残って練習していた。
けれどその中に里の姿は見つからない。本当に何処に行ったのだろうか、想像もつかない。里の行きそうな場所、なんて。
一瞬で里が居ないと判断して、その場を去る。肩で息をしながら駆け回り、里の姿を探すが何処にも居ない。大石から見つけたと連絡も来ない。そうこうしているうちにあたしの体力は底を尽き、必死で動かしていた足も止まった。ぜぇぜぇと喉が鳴る。その頬を雫が伝った。
「……え?」
一瞬汗かとも思ったが、頬に流れた雫は、少しの間を置いて額にも流れ落ちた。額からつむじ、肩。その間隔は徐々に短くなっていき遂にはバタバタとあたしの身体を打ち始めた。雨。
前髪が額に貼り付く。ぴたりと身体のラインに沿う衣服が気持ち悪い。このほんの数分で濡れ鼠になってしまった。
「何処か、雨宿りできそうなとこ……。」
今更とも思ったが、目に止まった木陰に駆け込む。とりあえず暫くはここに居るしかないだろう。息を整えたらもう一度里を探しに行こう、と額に貼り付く髪を手の甲で払うと同時に、スマホがメッセージの通知を告げた。