Target2:転生少女
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昼食の乗ったトレイを抱えて息を吸う。言葉にしようとして、結局吐き出されたのは吐息だった。何て、声をかければ。目の前にいる里に声をかけようとして言葉を選ぶが、どうしていいのか分からなかった。
「里。」
「……何?」
結局選んだのは単純に彼女の名前だった。昨日の逆。けれど昨日のように白々しい態度はお互いに取らなかった。里の前の席に座っている桜乃ちゃんは、年上に対して敬語を使わない里を疑問に思ったようだが口は挟んでこなかった。
「一緒に、食べてもいい……?」
「桜乃ちゃんに聞いてよ。」
「え!?私は全然!え、えと汐原さんどうぞ!」
急に話題を振られたからか、元来の彼女の性格なのか、焦りながらも隣の席を空けてくれる。里は相変わらずこちらを見なかった。とりあえず桜乃ちゃんの隣に座って食事に箸を伸ばす。昨日同様とても美味しかった。
里は桜乃ちゃんに話題を振り、桜乃ちゃんはそれに答えて談笑する。時折気を遣ってか、桜乃ちゃんがあたしにも話題を振ってくれるがそれに返したところで里が反応することもなく、三人での食事というよりは桜乃ちゃんとあたし、里と桜乃ちゃんの2グループで食事している気分だ。
気まずそうに肩を狭める桜乃ちゃんが可哀想だった。
「それで、何の用なの。」
「……別に、用とかじゃないけど。」
「じゃあなんで話しかけたの。」
里の視線はトレイに乗った、食べかけの食事に向いていた。多分これが、あたしに向けた唯一の会話だったと思う。言外に迷惑だと言われていた。
「このままじゃ、いけないと思って。」
それでも。もう、逃げない。そう決めた。
目下の問題を後回しにして、結局誰かがあたしの代わりに答えを出してくれるのを待つのは、もうやめる。そう、決めた。
だから、長いこと冷戦状態のこの姉妹喧嘩を終わらせてしまいたい、と。それはきっと、里からすればあたしの勝手なエゴなのだろうけど。
「……よ。」
「……え?」
「いい加減にしてよ!!」
その瞬間、食事中だとか周りの目だとかそんなことを差し置いて、里が声を荒げて立ち上がる。ガシャンと食器が音を立てた。
捻り出すように叫ばれる言葉には、悲痛な色が滲んでいた。
「昔からいつもそう!琹ばっかりいい子のフリして、怒られるのも悪者にされるのもいつも私!好かれるのは琹ばかりで私はいつも独りぼっち!私が、私がどんな気持ちだったかなんて知らないくせに、仲直りしようなんて言わないで!!」
今日初めて合った視線は、嫉妬とか眺望とか色んなものを含んでいて。里の声にしん、と周りの喧騒が静まり返る。
里の心中を初めて聞いた。想像したことすらなかった。でも。それなら、あたしだって。
「そんなの、里もじゃん。」
「は?」
あたしも床に付けた足に力を込めて勢いよく立ち上がる。声を張る為に息を吸い込んだ。