Target1:氷帝学園男子テニス部
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リビング、寝室、キッチン。
一通り回って感じたのは、生活感がないなぁという、如何にもシンプルなものだった。
多分誰も住んでいないのだろう。ベッドには皺一つすらなく、冷蔵庫には氷の一個もなかったから。ただ、一通り日常生活に必要な家電や家具は揃っているようだった。有難い。
だがスマホしか所持品のないあたしは、お金を持っている筈もなく食品や服を買うことが出来ない。人間、生きていくのに衣食住は必須だと言うのに。
どこかにへそくりでも残されてはいないかと箪笥やクローゼットなどの収納家具を片っ端から探っていく。これであたしの家でなかったら、完全に訴えられるレベルである。怖い。
果たして見つかったのは、汐原琹名義の通帳が三冊と印鑑。良かった、あたしの家で間違いないみたいだ。
通帳を開くと、一冊目には毎月振り込みがされていた。二冊目三冊目は貯蓄用なのだろうか、大した動きはないがそこそこの金額が印字されている。振り込みしてくれている相手の名前欄は何故か空欄なため誰か判断がつかないが、背に腹は変えられない。大切に使わせてもらおう。
だが、ここで問題が一つ。
買い物をできる場所をあたしは知らない。
ふらふらと散策も良いが、その間に日が暮れてしまいそうだ。どうしよう。
あたしの心情に呼応するようにぐーと腹の虫が鳴いた。
この腹の虫さえ気にしなければ食事は一食ぐらい抜いても問題ない。問題ないのだけど、先程から空腹を切に訴えるお腹を無視することは少し難しそうだ。多分、空腹で寝られない。
ならばどうしようかと考えて、すぐに思い付いたのは先程別れたばかりの彼だった。
優しい彼は食料を恵んではくれないだろうか。もしくは、スーパーまでの道のりでもいい。
だが、だが。彼はあまりあたしに関わって欲しくなさそうだった。そんな彼に食料かスーパーまでの道のりを嘆願するのは少し馴れ馴れしすぎやしないだろうか。あぁ、相手が昌山であるなら何も考えずに突撃するのに。
嫌われたくない、とそう思う程にはあたしはこの世界の登場人物が好きだった。
ぐーっと静かな室内にもう一度お腹の音が響く。……仕方がない。
あたしは急いで家に鍵をかけて忍足の家の前に立ってインターホンを押した。これで最後。彼に迷惑をかけるのは、これで最後にしようと心に決めて。