Target2:転生少女
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「よく……よく、分からないんです。」
漸く口を開いたちょたの唇を濡らした言葉は、あたしの不安を拭い去ってくれない。本人でも分からないのに、あたしがちょたの思考を図るなんて出来るはずもないから。けれど、彼の思考が少し歪んでいるような気がしてならなかった。
「分からない……?」
「は、い……。琹さんが一人でいるのが嬉しくて。でも!宍戸さん達と話してるのが嫌とかじゃなくて!」
思考が纏まってないのか、ちょたの吐く言葉は支離滅裂だった。彼の手にあった紙コップがくしゃりと握り潰される。ちょたも飲み干していたのか、中身が溢れることは無かった。
ちょたは必死にあたしに訴えかける。本当に自分でもよく分かっていないんだろう。不安気に揺らぐ瞳が、親に捨てられた子供のようだった。必死で、見捨てないでと訴えられているようで。
「琹さんが、俺じゃない誰かと居ると……不安、で。堪らなくて。何で、俺じゃないんだって、思ってしまって……最低ですね、俺。」
くしゃり、と歪んだのは紙コップだけではなかった。ちょたの顔も、今にも泣き出しそうな程くしゃり、と歪む。
彼には悪いけど、あたしは安堵の溜息を吐いた。だって、ちょたの言っていることはがっくんやジローちゃんと何ら遜色のない、独占欲だから。ちぐはぐのように思っていたちょたの言動が、あたしの中で一つに繋がる。独占欲。ちょたはあたしを独り占めしたいから、一人であって欲しかったのだ。そうか、と一人納得すると一瞬にして抱えていた恐怖心が離散する。あたしは現金で、単純だ。
「ちょた、少し屈んでくれる?」
「え?……はい。」
ちょたはあたしの言葉に、泣き出しそうな顔のまま屈んでくれる。普段見上げるようにして合わせている視線が、真正面でかち合った。
「ちょたが望むなら、出来るだけの事はする。テニス部のメンバーを無視する事は出来ないけど、ちょたが嫌だって言うならテニス部以外とは話さない。」
「琹、さん。」
同じ目線になったちょたの頬に掌を当てる。いつぞやの滝にやったように指先で彼の頬を軽く抓って持ち上げて、無理やり彼の口角を上げた。
「だからほら、スマイル、スマイル!」
お手本、というように自分の口角を上げて笑みを浮かべるとちょたもそれに倣って頬を緩めた。優しい、笑み。彼の表情には、もう不安なんて残っていなかった。
「ありがとうございます。……でも、いいです。……琹さんが独りになるのは、俺も嫌ですから。」
上体を起こした反動で、あたしの手が頬から外れる。あたしが一人で居ると嬉しいのに、一人で居るのは嫌だと言うちょたに首を傾げる。
けれど彼の矛盾した言動にも、もう恐怖心は抱かなかった。