Target2:転生少女
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あれから、榊先生から軽いお叱りを受けてマネージャー業をこなして、気がつけば夜。
トレイに並ぶ食事の豪華さに、ここの合宿施設の持ち主を思い出した。跡部も大概だけど、榊先生も大概だよなぁ。そんな事言える筈もないけれど。
「汐原と言ったな。」
呆れた様に渇いた苦笑を漏らすとふと声をかけられる。振り返ると夕焼け色のジャージ。柳だった。
「……どうしたの?」
「夕食を共にしても構わないだろうか。」
食事の乗ったトレイを持ったまま、顔であたしの前の空席を示す柳に是の意を返す。別にあたし独りで摂ろうとしていた食事だ、空いている席に誰が座ろうと関係はないだろう。
氷帝の面々に一緒に夕飯を、と誘われはしたが、この後少々したい事があると断っていた。
「先程は赤也が迷惑をかけたな。」
「別に、あれは……。」
「「あたしが先に手を出したから」とお前は言う。」
あたしの声に重ねる柳。流石だな、と思う前に何故か苦笑が漏れてしまった。
憧れの人と言えど、言葉を遮られるのはあまり心地の良いものではない。それに切原の事に関しては。
「柳が謝る事でもないでしょう?」
「そうだな。だが、赤也は少し正直すぎるきらいがある。余計な事を言ったんだろう?」
「あー、うん。まぁ、切原が言ったことに対して怒ったのは確かだけど。」
そもそも彼の言っていた事が100%間違いだとは言えないのだ。あの時日吉に手伝わせて会話に花を咲かせていたのは事実だし、自主的に手伝ってくれたとはいえ日吉は柔軟の時間を削っていたのだから。
あたしが日吉の邪魔をしていたのは事実だった。だから、それについて非難されるのは否定も出来ないし受け入れるしかないと思っている。だけど切原の言い方はまるで。
「……日吉とか跡部とか、氷帝の人達が悪いみたいに、言われたから……。」
ちびちびと箸先でおかずを突きながら言うと、柳は行儀が悪いぞ、とあたしを窘めた。そういえば日吉も同じ事を言っていたな、と日頃の行いを反省するがそう簡単に直りそうはない。
「あぁ、それは赤也に伝えておこう。」
果たして柳は彼に何て伝えるつもりなのだろうか。よもや、人の悪口を言うときは本人の目の前で分かりやすく他人を非難しない言葉で以って非難しなさいとでも言うつもりか。まぁ、それでも陰口よりは幾分かマシだか。
「……うん、でも。それを踏まえても、今回の事は先に手を出したあたしが悪いよ。後で本人にも謝っとく。」
「……そうか。」
それ以降柳は口を開かなかった。
黙々と二人で食事を口に運ぶ。美味しい筈の食事の味はよく分からなかった。
「ご馳走様。それでは先に失礼する。」
食べ終わったのか、空になった食器をトレイごと持ち上げ柳は席を立った。結局彼の目的は分からなかったけれど。まぁ、彼のお陰であたしも少し冷静になれたからそれで良しとしよう。もちろん、柳に言った言葉を撤回するつもりはないから切原に会ったら謝るつもりではあるけれど。自分で思っていたよりも簡単に答えが出せたのは、日吉や跡部を馬鹿にされたことにはそれ程腹が立っていなかったからかもしれない。それは多分、あたしが日吉達を好きだと思うのと同じくらい切原の事も好きだと思ってるからで。
案外他の問題にもあっさりと答えが出せるかもしれないな、と日中の滝の背中を思い出していた。