Target2:転生少女
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日吉と他愛もない話をしながらコートへと向かう。先程まで一人で居たい気分だったのに、そんな事忘れてしまう程に楽しげな声を上げていた。あたしも案外都市伝説やら七不思議やら、そういうオカルトじみた話は大好きだ。
「汐原さん。コート着きましたよ。」
どうやら話し込んでいる間についてしまったようであたしは焦ったように意識を切り替えて日吉に笑いかける。仕事よりも日吉との会話を優先していた事を気づかれないように。
「日吉、ありがとう。助かった。」
あたしは彼からトレイとウォータージャグを受け取った。ここからならあたしでも余裕で運べる。日吉はそんなあたしを見届けて、コート周りを走り込んでいる集団の中へと向かっていった。
今回の合宿は三つのグループに分けてスケジュールを立てている。グループ分けは学校毎ではなく完全ランダムに決まっていて、日吉の所属するグループは今の時間、走り込みだったようだ。どうやら柔軟に充てる時間を削って手伝ってくれたらしい。悪い事をしたな、と思いながらも済んでしまったことは仕方がない。後で何かしらお礼をする事にしてあたしは当初の目的の為にコートへと足を向ける。
早足に自身のグループと合流する日吉といくらか距離ができたところで、ガシャンと足元に何かが引っかかった。身体のバランスが崩れる。べしゃりと倒れる身体を支えることができずに派手に転んだ。しまった、と思う時には既に遅く、トレイの上に伏せてあった紙コップは地面に転がっていた。幸いだったのは、ウォータージャグの中身をぶちまけていない事だろうか。再度ドリンクを作り直してもらうのは気が引けた。
「い、た……っ!」
思わず声を上げる。生理的な涙で視界を滲ませると頭上から呆れたような溜息が聞こえた。まだ近くに居たであろう日吉に見られたのかもしれない。また日吉に悪態つかれながらも助け起こされるんだろうなと顔を上げると、意外にもそこにはあったのは日吉ではなく、紳士の姿。あたしに対して手を差し伸べていた。
「大丈夫ですか?汐原さん。」
「大丈夫。ありがとう。」
あたしは遠慮なく柳生の手を借りて立ち上がる。その瞬間あたしの鼻を貫く強めの香水の匂い。
(柳生に香水……?)
少しだけ違和感を覚えて一瞬首を傾げるも次の彼の行動で納得が行く。きっと彼は仁王なのだろう。あたしが立ち上がった後にすぐ様立ち去ったのがその証拠。柳生なら、多分コートまでエスコートしてくれるだろうから。なんて、あたしの勝手な理想なのかもしれないけれど。
あたしはスコートの汚れを払い、コートを目指した。紙コップは後で新しいものを取りに行かなければ。
そんなあたしを侮蔑の目で見ていた人物に気づかないまま。