Target2:転生少女
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「やっとこれで最後か。」
テーブルの上に並べてられていた十数個のウォータージャグも何度か往復を繰り返して、残るは二つ。それを散々繰り返したように両手に引っかける。加えて、最後の今回は部員たちがドリンクを飲めるように紙コップも持っていかないといけない。だけど両手はウォータージャグで埋まっている。もう一往復すればいい話なんだけど、それをするにはあたしの性格には横着な面があった。
結局、両肘にウォータージャグを下げて、空いた手先で紙コップを並べたトレイを持つ。そして同じくトレイに名前を書く用のマジックペンを三本転がした。肘に下げるには多少ウォータージャグの重みが辛いが何とか一度で運べそうだ、と食堂のガラス戸に背を向けて体重をかける。行儀が悪いが仕方がない。流石にこれらを片手で抱えられるほどの筋力はあたしにはないから。果たして、体重をかけたドアは開いた気配が無かった。代わりにあったのは、背中に伝わる熱。誰かの、熱。
「あ、日吉じゃん。どうしたの?」
「行儀悪いですよ。」
開口一番に悪態をついた日吉はもう一度あたしの姿を見てため息をついた。あたしが開けるよりも先に、日吉が出口を作ってくれていたようだった。けれど、その出口は日吉が立ち塞いでいる。日吉が退いてくれないと通れない。でも退いてくれる気配は皆無だった。流石に腕が限界を訴え痙攣し始める。少々無茶な持ち方だったらしい。カタカタとトレイの上のマジックペンが音を立てた。
「えと、日吉ごめん。通して?」
彼に告げた瞬間、日吉はあたしからトレイを奪い、更には肘に下げていたウォータージャグを一つその手に移動させる。
「汐原さんは無茶をしすぎなんですよ。身の程を知ってください。」
日吉は身体を横にずらして道を空けてくれる。残ったウォータージャグを一つ持ち直して食堂の外に出ると、日吉はあたしに背を向けて前を歩き始めた。どうやら持って行くのを手伝ってくれるらしい。
「……ありがとう。」
「……別に、序でです。」
前を向いたまま、振り返ることもしないで日吉は言う。序で、と彼は言ったけどここには練習中に彼らが利用するような施設はない。用事があるわけがないのだ。
日吉も大概優しいよなぁ、と口には出さなかった。日吉の機嫌を損ねてしまう気がして。
「あぁ、そうだ。ねぇ、日吉。氷帝学園の七不思議って何か知ってる?」
その代わりに、先日宍戸達にも振った話題を日吉にもしてみる。日吉は相変わらず前を向いてあたしの少し前を歩いていたけれど、その声は楽しそうに弾んでいた。