Target2:転生少女
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コンプレックス。辞書でそれを調べると"「インフェリオリティー コンプレックス」(劣等感)の略。"とある。あたしにとっての劣等感とはまさに。
「青学二年の水羽里です。宜しくお願いします。」
里は一つ礼をして頭を上げる。と、同時にグツグツと湧き上がる嫌悪感。あたしはこの人が、嫌いだ。
あたしなんかより沢山のものを持っているのに、自分は何も持っていないと嘆く人。あたしの、姉だった。
どうして名字が違うのかとか、どうしてあたしより年下になっているのかとか。聞きたいことが山程ある。だけど、それを聞くために話しかけるのは少し躊躇われた。だってあたしがこの人を嫌っているように、里もまた、あたしを嫌っているのだから。
今更どんな顔をして話せばいいのか、分からなかった。
「汐原琹。氷帝三年。宜しく。」
あたしも一度礼をして、それから頭を上げると目があったジローちゃんに手を振った。眠そうにしているジローちゃんに起きてと釘を刺したつもりだったが効果は抜群だったらしい。嬉しそうに大きく手を振り返してくれた。可愛い。
それに思わず破顔すると、隣の里は誰にも分からないくらいの程度で笑みを零した。バカにされているようで腹が立つが、今は青学の桜乃ちゃんが自己紹介をしている最中だ。姉妹喧嘩は得策ではない。
今回の合同合宿に参加するマネージャーはあたしを含めて三人だった。姉である里と、竜崎桜乃ちゃん。多分予想だが、桜乃ちゃんは竜崎先生の繋がりで呼ばれたんだろう。
参加する学校は三校、ならサポートするマネージャーも三人の方がいいだろうから。合宿をサポートするスタッフの枠で自己紹介を済ませたあたし達は榊先生に促されて元の席に戻る。オリエンテーションはあと少しで終わりそうだ。
チラリと里へと視線をやると、彼女もあたしと同じく先生の話を聞いていないのか、何処かうわの空で視線が舞っていた。彼方此方へと面白いモノを探すように。そしてついにあたしの方へ視線が向く。目が合った。
それだけならまだ偶然で済まされるし、別にすぐに逸らせばいい話。だけどそれが出来なかったのは、多分。
あたしの抱えているコンプレックスが、里に付随するものばかりだから。
昔からあたしが出来ないことを里はするするとやり遂げてしまう。羨ましくて、妬ましくて、どうせあたしが出来なくても里ができるんだから、と匙を投げてしまったモノが多々ある。自業自得なのは重々承知の上で、里さえ居なければ、と思ってしまう自分が居るのも事実だった。
「……行ってよし!」
幾分か聞き慣れた台詞を合図に、ホールに集まっていた数十人が散り散りになる。たった今から、合宿が始まる。ここに着くまでは期待に胸を弾ませていたが、今は不安でいっぱいだった。