Target2:転生少女
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合宿一日目、朝。
自宅の鏡の前で、あたしはくるりと一回転する。ラインが八本の氷帝レギュラージャージに、白いスコート。いつもは部室で着替えるが、今日は合宿だからと家からこのままの格好だ。
憧れの、彼らと同じ格好。普段の部活でもそうだけど、この格好に着替えるといつだってドキドキと胸が高鳴る。嬉しさと、コスプレしている感覚になる気恥ずかしさとが思考を埋める。
もう一度くるりと一回転して、パチンと両頬を叩いた。
「よし、足手纏いにならないように頑張ろう!」
昨日の内に纏めておいた荷物を担ぐ。普段の荷物より少し軽い。同じく自分の心も軽かった。
ここ数日は、多少不穏な人間関係に思考を巡らせていたが、合宿の間はそれも端に置いておけそうだ。
いつも通り玄関のドアを開けると、忍足が壁に背を預けて立っていた。少し待たせてしまったようだ。
「おはよう。遅れてごめんね。」
「ええよ、そんな待ってへんし。」
身長の関係上、上目がちに見上げると、忍足はぽんぽんと頭を撫でてあたしの手を取って歩き出す。いつぞやのあの日から習慣となってしまって、もうドキドキと緊張する事はない。けれど嬉しさは以前と変わらず胸に溢れていた。
手を繋いで、大きな荷物を抱えた二人。通路を塞いでしまっているのが少々気になるが、早朝の人が少ない時間だから許してもらおう。事実、歩いているのはあたし達二人だけだった。
「……なんで手を繋いでるんですか、気持ち悪い。」
と言いながら、心底嫌そうにじとりと忍足を睨みつける日吉。あからさまに不機嫌そうだった。同じくして不機嫌そうながっくんが、繋がれていた手をチョップで切る。反射的に手を離し、一歩身体をずらした忍足がやれやれと肩を竦めた。最近よく見る風景。
粗方人数が揃っているところを見ると、どうやらあたし達が最後だったようだ。
「おいてめぇら、さっさと並べ。」
やいのやいのと騒いでいると跡部から声がかかる。日吉を含めた準レギュラー陣は既に列を形成し、点呼を待っているようだった。
あたしは慌ててバスの入り口につき、参加者名簿を取り出す。ここからが、あたしの仕事だ。
バスに乗り込む部員の名前と参加者名簿を照合し、参加欄にチェックを入れていく。準レギュラーが全員乗ったのを確認すると今度はレギュラー陣の番だ。といっても、レギュラー陣は八人。圧倒的に楽だった。
跡部を筆頭に、樺地、忍足……と続いて最後の滝の名前にチェックを入れるとあたし自身もバスに乗り込む。最後に榊先生が乗り込むとバスは発進した。二泊三日、会った事のない他校のテニス部員に、もう忘れてしまおうと仕舞い込んだミーハーな心が騒ぎ出す。だけどがっくんに宣言した通り、あたしは他校のテニス部のモノにはなるつもりは無い。ただ少し、話が出来ればそれで良かった。
氷帝のテニス部員に対しても、最初はその程度だったのに。