Target1:氷帝学園男子テニス部
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コテンとジローが汐原の肩に凭れかかる。授業が終わるや否や、恐らく購買に向かおうとしていたであろう汐原を呼び止めて何やら話していたハイテンションなジローの面影はどこにも無かった。
それに対抗するように岳人も汐原との距離を詰める。困ったように笑う顔が視界に入ってため息を吐くと、隣にいた忍足も同じだったらしい。汐原と俺と忍足の三人の溜息が重なった。
初めて会った時、階段から足を踏み外すコイツが見えたのは偶然だった。何を考えるよりも先に勝手に走り出す足を止める事は出来なくて。
無事受け止めた汐原は、暫く俺の上で跡部と言葉を交わしていたが、立ち上がった時にはありがとう、と手を差し伸べた。にこり、と笑みを口角に描いて。
けれど、その瞳は不安定に揺れていた。
それが酷く俺に纏わりついた。
守らねぇと。俺が、コイツを守らねぇと。
間近でそれを見たからか、使命感に似たような感情が身体を巡る。それ以来汐原から目が離せない。
汐原が泣くと心臓を鷲掴みされたように痛くなって、汐原が笑うと嘘みたいになんでもよくなる。だから、コイツが傷つく事は、あってはいけない。
なのに今、汐原の背後にあまり良くない視線を向けるヤツが居る。錫木。忍足が座っている席の本来の持ち主。ジローが汐原に寄りかかった時から、嫉妬に染まる視線を汐原に向けている。
俺が、守らねぇと。コイツを傷つける、奴から。
「……宍戸?」
「わりぃ、聞いてなかった。何の話してんだ?」
少し意識が飛んでたようで汐原の声でハッと我に返る。汐原と視線を合わせると、相変わらずゆらゆらと不安定に揺れていた。それが助けて、と言われているようで。俺を頼っているようで。充足感に満ちる。
破顔しているのが自分でもよく分かった。
「ん、いや、特に話はしてないけど。あ、そうだ、氷帝に七不思議とかあんの?」
そんな汐原の問いかけに、聞いた事ねぇだとか、知らへんなぁとか。各々回答をする。岳人は不機嫌そうに眉根を寄せていた。こういう話は苦手だった筈だから仕方ねぇが、激ダサだな、と口にせずにはいられなかった。
「そういうのは若に聞けばいいんじゃねぇか?」
「あー、そうか、日吉こういう話好きなんだっけ。今度聞いてみようかな。」
別に本当に知りたかったわけじゃないんだろう。ただの雑談。だから、誰も知らないと分かると汐原は話題を変えて話を続ける。楽しそうに、カラカラと笑いながら。
その話題に乗る忍足と岳人も同じように笑っている。多分、俺も。汐原の選んだ話題は、明後日からの合同合宿についてだった。楽しみだ、と笑う。岳人が不満気に頬を膨らませる。窘めるように口を開く汐原に、俺と忍足は無意識に安堵の溜息を重ねた。
「心配しなくてもあたしは他校の人のものにはなんないよ。」
その言葉が、頭から離れない。