Target1:氷帝学園男子テニス部
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺たちの居ない日常を想像しないで、と唐突にジローちゃんに言われたのが十数分前。それに肯定の意を込めた返事をして、購買に向かったのが数分前。そして、目的の物を手に入れてホクホク顔で自身の教室に戻ってきた現在。
「……人数多くない?」
あたしの席の周辺は人で溢れていた。
あくまでも普段と比べての話しで、具体的な人数で表すと四人でしかないのだけど。普段はあたし一人か、稀に宍戸かジローちゃんを巻き込んで二、三人で食べていたから五人での昼食は初めてだった。因みに、ジローちゃん呼び……というか、名前呼びを嘆願されたのは購買に向かう前である。
あたしの席を取り囲むように、忍足、がっくん、宍戸、ジローちゃんの四人が各々の昼食を楽しんでいた。君たちの座っている席の本来の持ち主は何処へ行ったのか知らないが、無理やり追い出したのではないことを祈ろう。ただ、忍足の座っている席が、いつぞやの女子クラスメイトの席だから強ちあたしの想像は間違いないのだと思う。呆れる。そこまでしてあたしと昼食を摂る理由はないだろうに。と、そこまで考えて
とりあえず自分の席に着き、食事を終わらせてしまおうと買ってきたパンに齧りつく。口に広がるソースの香りとじゅわっと舌をコーティングする油。少しベタつく口内を瑞々しいレタスがリセットするかのように油を攫っていく。そして最後に残る後味は、香ばしい小麦の香り。コロッケパンだ。うん、美味しい。
お金持ち校だけあって、購買や食堂のお値段は幾分かお高めだがその分美味しいと思う。サクサクとした衣は揚げたてと言われても納得できた。
「……もしかして、琹ちゃん毎日パンなん?」
コロッケパンを堪能して、次のパンに手を出す前に口内をリセットしようとお茶に手を伸ばした時に声を掛けてきたのは忍足だった。とりあえず、当初の目的通りお茶を飲んでから口を開く。
「毎日じゃないよ、食堂行くこともある。たまにだけど。」
本当にたまにだけど。広い食堂で一人で食べるのは中々辛いものがある。どうせ一人で食べるなら教室の方がまだマシだ。いかんせん一緒にお昼を共にしてくれるような女の子の友達は、未だ出来ていないものだから。
その事実はあまり言いたくないから、言葉をほんのりぼかしてお茶で流し込む。これ以上聞くな、と新しいパンへ手を伸ばした。うん、これも、美味しい。だけど、彼らのお弁当が少しだけ、羨ましかった。