Target1:氷帝学園男子テニス部
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なんてね、という言葉で今しがた気づいてしまった自分の
なんなら軽く歯がぶつかるくらいの強引さで。本当に、ただあたしから言葉を奪うためだけのキスだった。
「いいぜ、少なくとも俺は琹のものになってやる。だから琹も俺のモノになってみそ!」
がっくんの吐息が感じられる程の距離で、彼がにっと悪戯っ子のように笑う。じわじわと去った筈の熱が自分の顔に集まっていくのを感じた。
(何でこうも、彼らは人に触れることに躊躇がないの!触れられる側のあたしはこんなにも余裕がないのに!)
そうは思っても、この状況を引き起こしたのは後先考えずに吐いたあたしの言葉が原因で。まさに自業自得、なのだけど。
それでも、彼らの余裕には納得いかない。というか、少なくともがっくんはあたしを好きだというのだから、照れるくらいの仕草は見せられないのか。そう思ってじとりと睨みつけるように彼の瞳を追う。瞬間、動悸が激しくなる。
余裕綽々といった表情をしていると思っていた彼は、悪戯っ子のような笑顔のまま顔を紅く染めていて。それでいて、充足感に満ちた顔をしていたから。
あたしの口から不満は漏れてこなかった。
暫しの沈黙、それは先日までのものと違って気まずさはあれど、ぎこちなさはどこにもない。
この沈黙を無理に打開したいとは思わなかった。けれど、そうはいかない。終業のチャイムが鳴り響く。
多分、もう二度と中庭で聞くことはないであろうチャイムが、この沈黙を切り裂いた。
あぁ、そろそろ。流石にそろそろ戻らなければ。体操着から制服へ着替えもしないといけないし。
それに、あたしはこの学校に跡部の口添えを受けて通学している。あまり跡部に迷惑はかけたくない。
「がっくん、流石に教室戻ろう。」
「……そうだな。」
そう言いながら互いに立ち上がる。二人で並ぶと少しだけがっくんの方が視線が高い。いくら身長が低いと言われていようと、矢張り男の子だなと思って視線を上げると、再度がっくんにキスをされた。
ここ数時間で幾分か不意打ちには慣れたけれど、彼らの照れた表情にはどうにも慣れそうにない。赤く染まった頬が、何とも愛しい、と。そう、思ってしまう。
そして、そんな彼が"自分のもの"になったと歓喜に浮き立つ心が抑えられない。
数時間前にここに足を運んだ時はずんと重かった身体も、今では軽やかに弾んでいて。なんなら気を抜けばスキップでもしそうなくらい浮き足立っている。自分のことながら、現金なものだ。
それでも、がっくんが好きだと言ってくれた自分が嫌いにはなれなかった。