Target8:男装少女
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この場所が木陰だからだろうか、広場よりも幾分か軽やかな風が髪を撫でた。その風は甲斐と平古場の髪を揺らしはしたが、心までは揺さぶってくれなかったらしい。誰も口を開かないまま、険しい顔での睨み合いが続く。あぁ、いや。あたしの
「……温泉、ジローちゃんが見つけたらしくて。多分、学校ごとに行くだろうから、あたし達マネージャーを
「その言い分で我々が許可を出すと思ったんですか。」
「思ってないけど、なんだかんだキミ達優しいから。」
そこまで言って、あたしは一つ深呼吸をした。
じんわりと湿気を多分に含んだ空気を胸に吸い込み、強張った表情を解す為にゆっくりと吐き出す。それから視線を持ち上げ、絆されてくれればいいなって思った、と続ければ、今度は木手が呆れたように息を漏らした。
「その程度で絆される程、キミに甘くした覚えはありませんがね。」
「正直なのはいい事だけどな。」
「
そう言いながらも、彼等が一瞬の瞬きで瞳を覆い隠した瞼を持ち上げると、今までのギスギスとした空気は、普段の何という事もない空気へと塗り替えられていた。
そういうところが優しいのだと緩んだ頬をそのままに、罪悪感で震えそうになる声を出来るだけ抑えて、コロコロと彼等に伝えるべき言葉を舌先で転がした。
口を開いて、閉じて。いつまで経っても言葉を発せられないのは、あたしが臆病だからに他ならない。あたし以外の誰かが、バラしても良いと、跡部を裏切ってしまえばいいと、その決断を下してくれないから。
まごまごと言葉を濁すあたしに痺れを切らしたのは木手の方で、彼は組んでいた腕を左右を変えて組み直した。
「跡部くんには、俺に無理やり吐かせられたと言いなさいよ。」
「は?そんな事言ったら……。」
跡部から比嘉中に対する感情は、現時点では言うことを聞かない面倒な奴らくらいのものだろう。多分。でもそれにあたしが関わってくるなら話は別だ。
今は適当に躱している跡部が、真正面から木手達に向かい合うことになる。それがプラスの感情でなら良いが、間違いなく、それは負の感情だろう。つまり、完全な対立関係が出来上がってしまう。それはダメだ。跡部の役に立つどころか足を引っ張る事になってしまう。
どうすれば、どうしよう。
「大体、俺たちに交渉出来得る
ザリっと片隅で小さな音がした、かと思うと、その一瞬で目の前に木手が立っていた。
ひゅっと小さく息を呑む。困ったように眉根を寄せて瞼を下ろすと、じわりと一粒だけ、頬を伝った気がした。
(あぁ、そうか。やっぱり彼らは仲間ではないんだ。)
ただそれだけが、事実だった。