Target8:男装少女
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再三あたしを笑い飛ばした平古場がヒーヒーと息を整えて腰を上げた。
「
「何で分かんの。」
「
平古場はそう言いながら音のした方の茂みを覗き込み、ちょいちょいと手招きする。その手つきは先程あたしを追い払おうとした人と同じ人の物とは思えなかった。木手にあたしがここに居るとバレたらマズイのではないのか。
蛇ではないと分かり、一つ安堵の溜息を漏らすと、あたしは平古場に従って茂みを覗き込む。そこには彼の言うとおり木手と甲斐の姿。そしてその二人の正面に古庄寺くんが立っていた。
古庄寺くんは視線を落とし、木手達の視線に身動ぎをする。居心地の悪そうなその態度は、いつものしっかりと胸を張る古庄寺くんとは真逆だった。まるで何かに怯えるような。
「……どうして男の格好をしているんですかね。」
木手の言葉に古庄寺くんが顔を上げる。それだけだった。
彼女は何を口にするでもなく、逃げ出すわけでもなく、ただ、どうしようと木手を見つめる。
まるであたしを見ているみたいだ。
解決方法が分からない。だから誰か答えをくれそうな人に視線だけで訴える。それは多くの場合、目の前にいる人物だ。だって目の前にいる人にしか、視線では訴えられないのだから。
それはあたしの視線の先にいる"彼女"もきっと同じで。
あたしは何を考えるでもなく茂みを抜け出し、木手と甲斐の前に姿を現した。少し後ろで平古場が焦ったような素振りを見せたことを気配で感じるがどうだっていい。それよりも、そんなことよりも、あたしにはこの場から古庄寺くんを立ち去らせることの方が大事だったのだ。
「古庄寺くんここに居たの?探したよ。そろそろ夕飯の支度しないと。」
「……っ、ごめんなさい。すぐに行きます。」
「うん。あたしも後から行くから食材の用意だけお願いしてもいい?」
はい、と小さく言葉を取り繕った古庄寺くんはここぞとばかりに足早に立ち去る。
うん、分かる。分かるよ。泣きそう、だったんだよね。あたしも、一緒だから。
あたしは不服そうな木手の視線を背中に感じて振り返った。彼の隣には甲斐は勿論、いつの間にかこちらに来ていた平古場も居る。
木手の眉間に皺が寄った。あぁこれは、やらかしたな、と思っても遅い。あたしは辛うじてつい数分前までは存在していた筈の、彼からの期待を裏切ったのだ。
「どうして君がここに居るんですかね。」
そう言いつつも木手が一瞬だけ平古場に視線を投げたところを見ると、あたしだけに不満を抱いている訳ではないらしかった。
ただそれだけの事で、あたしは安堵のため息を一つ漏らした。