Target8:男装少女
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そろそろ夕食の準備をしなければと海側の食堂へ向かう。食材の残量を確認しながら、何を作るかは汐原さんと相談しなければ、と思った所でまだ汐原さんが来ていない事に気が付いた。
(……珍しいな。)
元来の責任感の強さか、彼女が遅刻している所を見たことがない。朝食の時も昼食の時も、だ。明確に何時から食事の準備をすると決まっている訳ではないけど、私より先に来ていて食材を並べて何を作ろうか、とにこやかに問いかけてくるのが常だった。
そこまで考えて、はた、と食材を並べていた手を止める。
「古庄寺くん。少しいいですか。」
沖縄訛りの声に思考を引き戻され今まで考えていた事が離散してしまう。私は今、何に気がついたのだっけ。
「……あ、はい。少しなら大丈夫です。」
それでも、この、目の前に並んだ二人に逆らってまで思考を続けようとは思えなかった。
暴力を振るわれる、とは微塵も思わない。彼等に恐怖も抱かない。
ただこの場に汐原さんが居ない事だけがちぐはぐで心細くなる。いいよ、ここはいいから行っておいで、と見送ってくれる声が無いだけで、何だか罪悪感が募る。
別に悪い事なんてしてないのに。
尻込みする足で食堂から出て、テニスコートのある広場を横目に歩いて行く。多分比嘉中の人達の使っているロッジへと向かうのだろう。けれどその少し手前で彼等は道を少しだけ逸れ、茂みの方へ足を向けた。カサリと少し葉の擦れる音がする。
勿論私もそれに続いた。
「んで?
突然足を止めた木手さん達が振り向く、と同時に私に向けられた言葉。それを口にしたのは甲斐さんだった。
目的、と音も無く口の中で反芻される。
私の目的。何だったのだっけ。私の目的は。
彼等と友達になりたかった。女の子として意識をして欲しかった。汐原さんとも水羽さんとも違う立場で彼等に関わりたかった。
それだけだったのに、もう分からない。
私がどうしたいのか、私にすら分からなかった。
「すみません、私にはよく……分かりません。」
私は視線を甲斐さんから自分の指先へと落とした。彼の目を見ていられなかった。
汐原さんも水羽さんも嫌な人であれば良かったのだ。大石さん達の気持ちを踏み躙るような、最低な人間であれば良かったのだ。
そうすれば、妬みなんて抱かなかったのに。
私の今のこの気持ちは、きっと怯みだ。
手に入れたい、手に入ると信じていたものが、私よりずっと出来た人達の物だったから。奪おうなんて思う事すら烏滸がましいような人達の、物だったから。
私が女だとバレてしまえば、幸村部長達との絆までも失ってしまう。
「……どうして男の格好をしているんですかね。」
私はその言葉に顔を上げた。
あぁ、どうしよう。バレてしまった。
バレる算段だったのに、いざバレてしまうと怖くてじわりと視界が滲んだ。