Target8:男装少女
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いつからこんなに怖くなったんだろう。
どうしてこんなにも怖くなったんだろう。
紙面上で見ていた時は、当たり前だがこんな感情は抱いていなかった。そしてきっと、彼等に出会った時ですら、抱いていなかった筈だ。
正直な話、彼等に嫌われたくないと思っていながらも、嫌われたら嫌われたでそれで良いとすら思っていた。拒絶されたら他に行けばいいのだから。だって、あたしが好きなのは何も氷帝の面々だけではない。
跡部が杏ちゃんに声をかけた時だって、哀しいとは思ったものの怖くはなかった。それなのに、今はこんなにも恐ろしい。
あたしはジローちゃんの背中に腕を回す。
二人分の体温は暖かい、というよりは季節のせいで暑い。それでも構わず腕に力を込める。
あたしは、ジローちゃんが好きだ。
それは確かにはっきりと口にする事が出来る、紛れも無いあたしの本心だ。
だけど、きっと。最初は、友愛だったのだ。
ジローちゃんに好きだと言われても、あたしが好きだと返しても。多分込められた意味は微妙に違っていたのだろう。無意識に。
だから、彼らに隠し事をしたところで罪悪感は抱けど恐怖心は抱かなかった。
嫌われたとて、それは自業自得で、悲しみはすれど開き直って昌山と共に帰るなり、もしかしたら幸村達の好意に甘えて立海に入り浸りになっていたかもしれない。だけど、それは以前までの話。
あたしは跡部に呼び出された時、確かに恐怖心を抱いていた。怖かった。
嫌われるのではないかと、声が震えた。
だからあたしは、彼等に嫌われる覚悟なんて微塵も出来ていないのに、全国大会が終わったら全て話すと言ってしまったのだ。
(こんなの、問題を先送りにしているだけだ。)
だけど、怖くて。
この世界で跡部達から嫌われる事が、今までと違う意味を持ってしまって。
好き、の意味が正しくそのままの意味になってしまって。
こんなの、可笑しい。
九人だ。あたしの好きな人の数。
どれだけ気が多いんだ、って笑い飛ばせる数じゃない。人として可笑しい。
跡部があたしを自分のものにしようとしなければ。がっくんが自分達のものになってほしいと言わなければ。
ただ好感の持てる友達で居られたかもしれない。こんなにも頭の可笑しい自分にも、彼等に嫌われる事にも恐怖する事は無かったかもしれない。
けれどそれを彼等の所為にするのはルール違反だ。あたしは、あたしの意思で跡部達の言葉に従うと決めたのだから。
「琹ちゃん。」
「ん?」
「大好き。」
「うん、知ってる。」
耳元で聞こえたジローちゃんの声。
いつもならあたしも、と笑い返すのだが、今は返せなかった。好き、の意味が違う気がして。
傷つけたくない、なんて、嘘だ。
本当は、彼等に嫌われる事であたしが傷つくのが怖いから。だから言えない。跡部達が漫画の