Target8:男装少女
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ギラリと瞳を貫く太陽を遮るバイザーの端に、スイカを模したビーチバレーボールが映る。空に浮いたソレを追いかけるように飛び上がったのは
足先で砂浜に線を引いただけの簡素なコート。遭難したのだから当たり前のようにネットなんて物は存在しない。けれど、確かにそこにネットが張られているかのように、見えない壁の先の彼は高く飛んだ。
汗が散る。
バシンと音を立てて
そう、そのまま。滝が器用に高く上げて最後にサエが相手のコートへと叩き落とすであろう。それがあたし達のチームの算段だった。
けれどそれは、一瞬の風に流され、大きく軌道をずらした。それは恐らく、サエでは間に合わない位置、波打ち際とは反対の広場側へ狙いを定め高く舞い上がる。
一番ボールから離れているサエでは間に合わないかもしれない。滝はあたしより近いけどルール上触れられない。ならば、そのボールはあたしが拾うしかない。
「琹ちゃん……!」
「任せて!」
そう考えたあたしの背中を押すように、サエの口からこぼれ落ちたあたしの名前。それを皮切りにあたしは走り出した。
砂浜に足を取られる。普段より柔らかい足先の感覚を楽しむ暇もなく次の足を踏み込んだ。ただ、ビーチボールだけを追いかける。地面に落とさないように、そう、落とさないように!
(間に合う……!)
あたしは、ボールが地面に接触するのを遮るようにして腕を伸ばした。変な所に飛んでいったっていい。このボールを落とさなければそれでいい。
けれどあたしの想いに反して、ボールは無情にも地面を目指し始める。間に合わないかもしれない。そう半ば諦めの覚悟を決めたところで顔を上げると、あたしの目の前には古庄寺くんが立っていた。
ぽすん、と綺麗にビーチボールは彼女の手の中に収まる。残念ながら、点は
「古庄寺くん、ごめんね。今、ビーチバレーしてて。ボールありがとう。」
「……いえ。」
落胆を隠してあたしは古庄寺くんからボールを受け取り、コートに向かう為に彼女に背を向ける。そのまま少しだけずれた帽子のバイザーを指先で直した。
「それ、真田副部長の帽子ですか?」
背後から投げられた言葉に顔だけで振り返る。そこには勿論古庄寺くんが居て、微笑ましげに頬を緩めて此方を見ていた。
あたしは何を考えるでもなく素直に肯定の意を返し、今度こそコートへと足を向ける。
あぁ、そういえば。
以前立海に行った時に同じ反応をした"女の子"が居たな、と気がついた時、ピンと何かが繋がった気がした。